Pages

.

ポノック短編劇場『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』感想:そうそうたる実力派による親子向け短編集

 ポノック短編劇場『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』を映画館で鑑賞してきました。3本の短編を54分で上映する珍しい企画。3人の監督が脚本も書いていて、全く違う方向性の作品を鑑賞できました。
ポノック短編劇場『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』
予告編より(当ブログの画像引用について
© 2018 STUDIOPONOC

 明らかに親子向けの作品だと思いますが、アニメファン視点では米林宏昌監督の『カニーニとカニーノ』が印象的。自分は米林監督の作品はイマイチ合わなかったのですがこの作品は良かったです。米林作品の好きなところだけを凝縮してくれた感じかな(笑)

 個別の感想は後半に譲りますが、2作目の『サムライエッグ』はこの企画でなければ出会わないだろう作品。充実した構成で見ごたえありました。3作目の『透明人間』は渋くて暗い雰囲気が大人にも受け入れやすい作品。

 小さい子供のいる親子なら見終わった後に会話のきっかけになる作品ばかりだと思います。1時間で3本と軽く楽しめる量ですしね。アニメファン的にはベテランの作った短編として作風の違いを楽しむって感じかな。

 スタジオポノックの意欲的な企画。興行的に大丈夫なのか?と心配になりますが・・・他の映画のついでにちょっと見てみるってのも良いと思います。


『ちいさな英雄―カニとタマゴと透明人間―』予告
 Studio Ponoc 公式配信

※予告編・公式あらすじ以上の重大なネタバレはないレビューですが未見の方はご注意ください。

そうそうたる実力派による短編アニメ


 実は予告を見たときは『カニの話』だけだと勘違いしてました。最初のポスターはカニだけだったしね。3本まとめた企画タイトルが『ちいさな英雄』という事で、一つの共通したキーワードになってるのかな?と思います。

 3人の監督が脚本も書いているので作家性も出てる気がします。米林監督は超有名ですが、百瀬義行 監督は古くから高畑勲作品に参加していた方で、山下明彦 監督はジブリ後半の作品、特に米林作品に多く参加されていた方。どちらも長年活躍してきた実力者という感じですね。

 あと何気に有名俳優さんが出演してるんですよね。全然チェックしてなかったのでビックリしました。尾野真千子オダギリジョー田中 泯などそうそうたる実力派俳優ばかり。演技も違和感ありませんでした。

※次項より個別レビューとなります。重大なネタバレはないつもりですが心配な方は鑑賞後にご覧下さい。

『カニーニとカニーノ』:米林作品の好きな部分だけをすくい取ったような作品


 実のところ米林監督の作品ってことごとく自分は合わなかったんですよね。ただ全部ダメなわけじゃなくて『メアリと魔女の花』の序盤なんてすごく好きでした。躍動感があって気持ちの良いシーンでした。

 そういう米林作品の好きな部分だけをすくい取ったような作品。自分のように米林監督の作品はちょっと苦手だなあ・・・という人でも意外と満足感が高いかもしれません。
カニーニとカニーノきょうだい
蟹の擬人化だと思ったが・・・
© 2018 STUDIOPONOC

 まさに短編という感じで長い物語のワンシーンのような作品。だからストーリーはそれほど深く掘り下げなくて、そこが良いのかもしれないですね。

 クライマックスの魚の描写などすごい緊張感で、スクリーンでみると迫力がありますね。魚をあそこまで怖く描けるとは。子供の反応が知りたくなります。

 でもタイトルが『カニーニとカニーノ』ってインパクトすごいですよね。正直笑ってしまいました。てっきりカニの擬人化かな?と思ったけど違うんでしょうか。本物のカニもでてきて『え?』って感じでした。

 まあ、小人みたいな存在なんですかね。その辺は本編で説明はないのですが特に理解に影響はなかったです。謎は多いですが話はシンプルで子供にも理解しやすいと思います。
関連記事 2017年に見たアニメ映画25本:感想総まとめ!-『メアリと魔女の花』- アニメとスピーカーと‥

『サムライエッグ』:短編劇場がなければ出会えなかった作品


 この作品は単体だったら絶対にお金払って見ないだろうな・・・と思うわけですが、じゃあ駄作かっていうと逆で素晴らしい作品なわけです。この作品こそ『ポノック短編劇場』という企画ならではの作品ですね。

 卵アレルギーの少年という重たそうな物語ですが、非常に軽やかに描かれていました。母親役の尾野真千子さんの演技と、ふわっとした絵のおかげでしょうかね。

この世界の片隅に』と同じような空気感というと言い過ぎかな。百瀬監督が多く参加していた高畑勲作品の影響を強く感じますね。
辛くて苦手な作品かな?と思ったけど
軽やかな展開で不快感を残さない。
© 2018 STUDIOPONOC

 少年はアレルギーが起こらなければ普通と全く変わらない活発な子供。わずかな摂取でも劇的な反応をしてしまう。このギャップがすごいんですね。食物アレルギーは知識としては知ってても、身近にいないとわからない事も多いわけで。

 激しい食物アレルギーを持っていても普段はこういう活発な子供だったりするんだな・・・とか、食べた瞬間に自覚するものなんだな・・・とか、あまり考えた事もなかった自分に気がつきました。当然ながら人によって状態は色々なんでしょうけどね。

 ただ説教くさい作品というわけじゃありませんね。構成的にも盛り上がりがあって短編とは思えない充実感なんですよね。単純に面白い!(そういう表現が適切かわかりませんけど)

 ただいかんせん図書館で上映されるような作品なので、お金を出して映画館で見ていると不思議な気分になってきます。

 まず自分では積極的に見ようとは思わない作品なので、こういう機会に乗せるというのは上手い戦略だと思います。とても心に残る作品でした。

 それにしても尾野真千子さんの関西弁って聞いていて気持ちが良いですね。自分は関東なので地域性とかは全然わかりませんけど。一聴して彼女だってわかるんだけど違和感ないです。

『透明人間』:渋い絵と躍動感!でも解釈がむずかしい


 この作品は年齢が上の子供でも楽しみやすい作品かな。絵的にはすごく渋くて良い雰囲気ですね。動きも素晴らしくて見ていてかなり期待が上がりました。

 特に浮遊感や疾走感は素晴らしいです。山下監督は『メアリと魔女の花』で作画監督補だったそうですが、メアリが箒で飛ぶシーンを担当してたの山下監督だったのかな・・・と思うほどですね。(本当のところは知りません)

 ただ、個人的には人物像がうまくつかめなくて戸惑いました。透明人間とは『透明人間のような存在感のない人』の比喩だと思うのですが・・・実際に空気のような軽さだったりして『実は幽霊なのかな?』とか思ったり。

 最後までこの人物の位置付けがうまく把握できなかったんですよね。そこを考察するのが面白いのかもしれないけど・・・ちょっと意図がつかめなくて
不安になるほど素晴らしい浮遊感
暗い絵も映画館だと渋い味わいで良い感じ
© 2018 STUDIOPONOC

 クライマックスも確かに盛りあがって凄いんだけど・・・どうも物足りなく感じてしまった。まあ子供にもわかりやすいシンプルな構成なのかな。短編だし変にひねるわけにはいかないですよね。

 この作品における『ちいさな英雄』って透明人間のことじゃなくて赤ちゃんのことなのかな?赤ちゃんが透明人間に生きる希望を与えたという事なんだろうか。

 下手に深読みせず素直に受け取るべきなんだろうけど・・・もしかして会社でも奥さんにも空気のように扱われているお父さんが『せめて自分の子供には認識されたい』という悲しい比喩だったりして・・・そう考えると泣けますね。

 まあ自分みたいな感想ブロガーも読んでもらえなければ空気みたいな存在だから共感するところはあるんですけど。それにしてもこの主人公はちょっと良い人過ぎますね。悲しいくらい。

 ある意味『みんなと同じでありたい』という心の叫びかもしれないけど、もう透明人間として割り切って自由に羽ばたいてほしいですね。自分はそういうストーリーを望んでいたのかもしれません。

 かなり期待感はあったのでちょっとハードル上げすぎたのかも。でも何気に長い感想を書いてるんだから、見た人に『考えさせる』という点では成功しているのかもしれませんね(笑)

 アニメーションとしての動きの面白さは抜群に良かったのですし、オダギリジョーさんや田中 泯さんの演技も良かったです。山下監督には今後も注目ですね。

最後に:幻の高畑勲監督作品を見たかった!


 3本とも方向性の違う作品でいいですね。お母さん、お父さん、子供、誰に取っても楽しめて、見終わった後に家族で色々と話ができる作品だと思います。

 ただ、実はこの作品は4本目として『高畑勲監督の短編平家物語』をお願いする予定だったそうです。(日テレの特番で脚本?が一瞬映っていました)高畑監督が亡くなって実現できなかったそうですが。
西村義明プロデューサー「高畑勲さんに1本頼むつもりだった」と短編劇場への思いを明かす -  cinemacafe

 確かに4本目に『短編 平家物語』が入る事で完成された感じがしますね。ぜひ見たかったなぁ・・・とはいえ、高畑監督に頼んでいたらスケージュール通りに公開できたか非常に心配ですが(笑)

 それは別にしてもスタジオポノックの意欲的な企画。興行的に大ヒットとはいかないでしょうが、映画館以外での上映会など広く需要はありそうですね。応援したいところです。

「カニーニとカニーノ」脚本・監督:米林宏昌
「サムライエッグ」脚本・監督:百瀬義行
「透明人間」脚本・監督:山下明彦
 プロデューサー:西村 義明
 企画制作:スタジオポノック

ポノック短編劇場 『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-』
公式ホームページ

reade more... Résuméabuiyad

映画『ペンギン・ハイウェイ』感想:失われし者たちへ贈る感動の挽歌

 『ペンギンハイウェイ』を映画館で見てきました。素晴らしかったですね。118分と少し長めだけど退屈にさせず、難解なストーリーをわかりやすく表現していました。石田祐康監督、今回長編が初めてとは思えないです。

 爽やかな初秋の空気のようで清々しい気持ちになるんだけど、自分はすごい泣いてしまいました。決して安直に感動させる作品じゃないです。でも、今を生きる私たちには心から響く作品

  2018年の日本で公開するにふさわしい時代性を踏まえた傑作だと思います。

映画『ペンギン・ハイウェイ』 予告1(公式)
予告編ではこの1の出来が素晴らしいですね。
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

【大まかな内容】

※中盤よりネタバレありのレビューとなります。
※原作未読での考察ですので独自の解釈です。違ってたらゴメンなさい。コメントで教えてくれると嬉しいです。

キャラの魅力が際立つ素晴らしい演技


 まず印象に残ったのはキャラクターの魅力ですよね。特に蒼井優さん演じる『お姉さん』が魅力的でしたね。予告見たときに蒼井優さんだって気付かなかったんですが、すごく個性的で味わいのある演技でした。
言われるまで蒼井優だと気づかなかった。
耳に残る声色と素晴らしい演技。
予告・主題歌トレーラーより画像引用(当ブログの画像引用について
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 俳優さんの声の演技って議論になることもあるけど、今回の蒼井優さんは大成功だと思うな。俳優本人の顔を思い浮かばせず、でも声優さんとも違うクセのある演技。それがあのお姉さんと本当にぴったりなんですよね。

 お父さん役の西島秀俊さん竹中直人さんの演技も良かったですが、どうしても本人の顔が浮かんじゃうんですよね。キャラの顔より演者本人の顔が強く感じてしまうのが俳優さんの難しいところ。それだけに今回の蒼井優さんのキャスティングは驚きました。

アオヤマ君は声優初挑戦?ビックリの好演!


 声優じゃないって意味では主人公アオヤマ君役の『北 香那』さん。彼女は今回声優初挑戦だって。ホントに?ってくらいうまい演技でしたね。

 男の子役がすごく合ってて声優さんだとばかり思っていました。演技か素かわかりませんが、独特の固い感じがアオヤマ君にピッタリでしたね。
潘めぐみさん演じるハマモトさん。
予告1の『そう言うと思った!』は最高ですね。
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 そしてハマモトさん役の潘めぐみさん。ここにアニメ声優入れるのは素晴らしいキャスティング。潘さんとウチダ君役の釘宮さんなどで演技の脇を固める事で、ビシッと芯が通るというか、アニメ作品として違和感なく鑑賞できました。

次項よりネタバレありの考察となります。

ファンタジックなお話かと思ったら・・・


 自分は原作小説を未読なので、可愛いペンギンの印象からどうストーリーが展開するのか想像できなかったんですよね。

 最初はトトロみたいに、大人には見えないペンギンを探すファンタジックなお話かな?と思ったら、いきなり序盤からたくさん出てくるし、大人にも普通に見えてるのでビックリしました。
ウチダ君とアオヤマ君。
ファンタジーよりの作品かと思ったらSFミステリーよりで嬉しい誤算
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 一歩一歩と秘密を解明するような展開は単純に面白かったしSF展開も好みですごく良かったですね。この辺は多くの人が面白いと感じるんじゃないかな?

 ただ、水の玉の謎とか、SF展開の部分は少し難解に感じる人もいるかな?とは思います。とはいえ劇中で色々ヒントが提示されているんですよね。考察しやすいし親切な構成だなと感じました。

 自分が感動したのはこの『SF展開』が図らずも現代の日本を象徴している展開になっているという事なんですよね。

森の奥の水の玉はなんだったのか?


 森の奥の水の玉(海)は世界の果てと繋がった世界。SFで言うところのワームホールみたいなものだと思うんですよね。
世界の果てにあるもう一つの世界が森に出現した。
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 アオヤマ君のお父さんが巾着袋で説明したように、時空がねじれることで世界の果てがアオヤマ君の町に出現した・・・って事ですよね。それは多分お姉さんが引っ越してきた頃と同時期なんじゃないかな。

 本当はその頃から町も少しずつ空間が歪んでいて、気付かないうちに小川が無限ループになっていたり、色々改変が進んで行ったんだろうなぁと思います。

この世の果ての失われた世界


 海の中の世界は、もう一つの地球。パラレルワールドとしての世界かもしれないし、別宇宙の地球かもしれない。そっくりだけど荒廃した世界

 いずれにせよ、この世界でお姉さんは死んでいるんだと思った。なぜならお姉さんが言った死を暗示させる『まだこの世界に未練があるんだ・・・』みたいな言葉。
お姉さんはいつ真実に気付いたのだろうか。
食事をとらずに姿を見せなかった頃だろうか。
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 お姉さんはあの時、忘れていた真実を思い出したのかもしれない。自分の住む世界は壊れてしまって本当は自分はもう居ないはずの人間だって。でも、なぜだか気づいたらもう一つの世界にいる。

 お姉さんはこの町に元々いた人なのだろうか?時空の歪みで別世界の同一人物が重なってしまったとか。

 それともこの世界にはいない割り込んだ存在なんだろうか・・・どちらにせよお姉さんの未練が時空を変化させるキッカケになった気がしますね。

『ペンギンハイウェイ』の意味


 いずれにせよ、この町はある意味で『お姉さんの夢の中』のような世界になっているんですよね。苦しい時は怪物やコウモリが出てきて、気分のいい時は好きなペンギンが出てくる。すべてお姉さんが元になっていろんな歪みが生じている。

 それに気づいた時、お姉さんもアオヤマ君も同じ結論に達したんですよね。『お姉さん自身が消えなくてはならない』悲しい結論だけど・・・お姉さんは前向きだったんだと思う。だって、あらゆるモノがペンギンに変わっていくじゃないですか!
あらゆるモノがペンギンになり水浸しの街が残される
ペンギンは彼女にとってポジティブの象徴
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 これはお姉さんが自分の死を受け入れていく物語。『ペンギン・ハイウェイ』というタイトルは失われた人やモノたちが進んでいく通り道を意味してるんじゃないだろうか。

 すこし飛躍しすぎかもしれないけど・・・お姉さんって、もしかしたら別世界ではアオヤマ君のお嫁さんだったのかもしれないって思うんですよね。少しだけ時間がずれてしまったけど。

 だからこの町にリンクしてしまったのかな・・・そうだったらいいなって思いました。

津波や水害を連想させる演出


 それにしても、自分はこのクライマックスを見た時、どうしたって東日本大震災や、近年の水害を連想してしまったんですよね。水浸しの街、様々なものが消えて、不自然に浮かぶ住宅・・・。

 遊歩道のレンガや町の色々なものがペンギンになっていくシーンでは、失われたすべてのモノがペンギンに生まれ変わっていくように見えて涙が止まりませんでした。あらゆる未練が断ち切られいく・・・って。
不自然に浮かぶ自動車や住宅
そして水浸しの街をみて水害を連想せざるをえなかった
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 だから、原作小説が2010年の発表と知ってビックリすると同時に感動してしまいました。震災前なんですよね・・・当然原作では想定されていないはず。

 だとしたら、あえて監督が演出で表現したのではないか?と感じました。原作の枠を壊す事なく2018年の現在にふさわしい作品として再解釈したとしたら・・・もちろん自分の勝手な解釈かもしれませんけど。

 震災以降、『君の名は。』や『夜明け告げるルーのうた』など震災をイメージさせる作品はありましたが、『ペンギンハイウェイ』は直接的な表現は避けながらも強い時代性を感じさせる作品になっていると思います。

 もし監督が意図的にしているのなら素晴らしい演出だと思いました。

この作品における『おっぱい』の意味をマジメに考察してみる。


 この作品ってとにかく『おっぱい』という言葉が沢山出てきて、良くも悪くもそこが注目されていますね。確かに家族連れではドキッとするセリフですが・・・。

 でもいわゆる最近の深夜アニメとは違う文脈ですよね。なにしろほとんど『揺れない』し(笑)絵的には極めて抑制的に描かれています。(逆に最近のアニメは揺れすぎ!)
絵的には『おっぱい』はあまり強調されない。
しかし健康的な色っぽさが非常にうまく表現されている。
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 それはいいとしても『おっぱい』は原作でもずいぶん使われているキーワードらしくて、それなら単なるお遊びHワードとは思えないんですよね。

 この言葉には何か意味があるはず・・・自分なりに一生懸命解釈してみました。

『おっぱい』は解明するべき謎でありメタファー。


 結論から言えば『おっぱい』とは解明するべき謎の象徴

 アオヤマ君にとって解明するべき課題は『この世界の謎』と『お姉さんの魅力』なわけですよね。『この世界』の鍵が『海(水玉)』なら、『お姉さんの魅力』の鍵は『おっぱい』ではないか?とアオヤマ君は推理した。

  • この世界』の謎を解く鍵は『』?
  • お姉さんの魅力』の謎を解く鍵は『おっぱい』?

 でも実際には、どちらも本質ではなかったんですよね・・・共通の鍵は『お姉さん自身』だった!
海は図らずもおっぱいの図と同じ形になる。
© 2018 森見登美彦・KADOKAWA/「ペンギン・ハイウェイ」製作委員会

 この世界の謎を解く鍵になるのは『お姉さんの存在』だった。同じく、お姉さんの魅力は決して『おっぱい』ではなく彼女という女性自身の魅力・・・それに気づいた時、アオヤマ君は本当の『乳離れ』ができたのかもしれませんね(笑)

 まあ乳離れは冗談としても『おっぱい』という言葉は『単なるHワード』ではなくて、なんらかのメタファー(暗喩)として理解できる気がしますよね。

石田祐康 監督『フミコの告白』との共通点


 今回監督の石田祐康さんって2009年の大学在学中に発表した「フミコの告白」という短編アニメが話題になったんですよね。自分も当時これを見てビックリした覚えがあります。


 改めて見直したのですが、無限ループで再び恋人と再会するっていうエピソードが、図らずも『ペンギンハイウェイ』を連想するものでちょっと感動しちゃいましたね。

 他に『陽なたのアオシグレ』という短編映画も制作してるんですね。2013年なので気づきませんでした。この予告編がホント素晴らしくて涙出てきましたよ。方向性は違いますが楽曲との合わせ方とか新海監督に比肩するセンスの良さを感じますね。


 今回は長編映画としては初監督。それで118分はすごいなぁと思いますが、得意なショートフィルム的な演出はあえて抑えて、ゆったりとした構成にしたのがすごいですよね。派手なシーンが多すぎると疲れちゃいますからね。

 確かにもう少し短いほうが?とか思わなくもないですが、退屈ではなかったし、なにより難解な物語を丁寧に描くために必要だったと思います。

さよなら・・・でもまた会えるはず。


 この作品、クライマックスで涙が出たと書きましたが、エンディングでも涙が止まらなかったんですよね。宇多田ヒカルさんの『Good Night』が素晴らしくて。溜まっていた感情が一気に溢れてしまう感じでした。

『ペンギン・ハイウェイ』 主題歌トレーラー(公式)

 楽曲タイトルの『Good Night』は『おやすみ』や『さよなら』の意味だけど、決して永遠の別れじゃない。また会う事が前提の挨拶・・・。

 この映画のラストシーン近く、アオヤマ君の『僕は会いに行きます』という言葉。そう、きっと会いに行ける。だって時空を超える事ができたのなら、お姉さんの生きている時空にだって行く事ができるはず。

 ハッピーエンドとは言えないのかもしれない・・・でも素晴らしい気持ちで映画館を後にできる作品。娯楽性と社会性が両立した傑作だと思います!

監督:石田祐康
脚本:上田誠(ヨーロッパ企画)
キャラクターデザイン:新井陽次郎/色彩設計:広瀬いづみ
制作:スタジオコロリド

映画『ペンギン・ハイウェイ』公式サイト

追記:小説『ソラリス』の影響について


 Twitterで『てぎ @tegit』さんより『ペンギン・ハイウェイ』は、スタニスワフ・レムのSF小説『ソラリス』(1961年)の影響があると聞いて驚きました。

 原作者の森見登美彦氏がブログで次のように書いていました。
 なお『ペンギン・ハイウェイ』は、スタニスワフ・レムの『ソラリス』を読んだ感動から生まれ落ちた作品であって、『ソラリス』がなければ『ペンギン・ハイウェイ』はなかった。 - 森見登美彦日誌より

 小説『ソラリス』(映画名 惑星ソラリス)は最近NHKの100分で名著』でも紹介されていて記憶に新しいのですが、謎が多く非常に深読みができる作品です。

 キーワードとなるモチーフや、それらがメタファーとなる事など『ペンギン・ハイウェイ』との共通点を感じます。例えば謎めいた『』や『人間ではない人物』そして『怪物』など・・・。

 もちろん全く違う物語なので(自分も言われるまで気づかなかった程ですから)強引にあてはめる事は出来ないのですが、少なくとも『ペンギン・ハイウェイ』という作品は非常に深読みができる物語である事は間違いない!と確信しました。

 むしろ今回の自分の解釈なんてまだ甘いんじゃないかって(笑)勇気付けられると同時に、すごく想像が広がって興奮しましたね。

 この原作のもつ懐の深さを十二分に引き出した石田祐康監督や脚本の上田誠さん・・・この作品はスゴイわけだ。子供から大人まで現代の日本人にとって見る価値のある作品だと思います。

reade more... Résuméabuiyad