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劇場版『魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』の感想:満足度は高いけど『魔法科』の魅力ってなんだっけ?

 劇場版『魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女』を見てきました。

 映画らしいゆったりとした進行でTVシリーズとの違いを感じましたね。わかりやすくてキレイにまとまっていたと思います。

 ただ、ちょっと手堅くまとまりすぎて『魔法科高校の劣等生』らしさが物足りなかったかな・・・まあ終わってみると意外と満足度が高いのはやっぱりキャラの魅力ですかねぇ。

TV版のみで原作未読でも特に困らなかった
知らない人や団体は出てくるけどついていける感じ。
第3弾特報/本予告より画像引用
当ブログの画像引用について
©2016 佐島 勤/劇場版魔法科高校製作委員会

 TVシリーズで『もっと見たいな』と思っていた『柴田美月』や『光井ほのか』がこれだけたっぷり堪能できたのは想定外でした。特別フューチャーされてるわけじゃないんだけどね。これ目当てにもう一回見に行ってもいいかなぁ・・・って思うくらい(笑)

劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女 第3弾特報
個人的には『本予告』よりこちらの方が好きな予告編
(アニプレックス公式配信)

 『キャラを楽しむ』という点では満足なんだけど、TVシリーズで感じた『魔法科高校の劣等生』の面白さって何だったかなぁ?って、ちょっと考えさせられる作品でした。(原作小説は未読での感想です)

※『事前に原作読むのは必須じゃない』文末に追記しました。
※後半からネタバレありのレビューになりますのでご注意ください(スキップ可)

初日は祭り状態の大盛況!


 久しぶりの封切り初日の鑑賞だったのですが、これが予想以上の祭り状態で驚きました。ムービックスさいたまのロビーは物販と入場者の列でぎゅうぎゅう詰め(笑)大部屋2つ同時に上映して捌いてました。

 いつもは映画はすいてる席で見るのが好きだけど、ここまで祭り状態だと逆にテンション上がりますね。

 420席が最前列までほぼ満席で、これ普通の回だよ、今日たしか5回目の上映(舞台挨拶・LV回含む)なのに・・・こんなに人気があったとはねぇ。

 『さすおに』なんて揶揄してても、やっぱりみんな好きなんだなぁと実感しました。まあ『ガンダム THE ORIGIN』と違って客層はかなり揃ってましたが。
関連記事 機動戦士 ガンダム THE ORIGIN I アニメ版 映画 感想:涙を抑える事ができない傑作 - アニメとスピーカーと
※次項から若干ネタバレありのレビューになりますので未見の方はご注意ください。
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この大人数で鑑賞するサービスシーン・・・


 ストーリーは一見複雑に見えて実際はシンプルな構成。前半はとてもゆっくりした進行で、ラストに向けて一気に盛り上げる感じでわかりやすかったですね。
 
 見てる最中は前半ちょっとのんびりしすぎでダレるなぁ・・・なんて思ったけど、キャラを堪能できたって意味では良かったのかな?前半はある意味ファンムービーになっててサービスシーンの連続でしたね。

ほのかってこんなにナイスバデーだったっけ・・・
ファンには120%の満足感がある作品。
©2016 佐島 勤/劇場版魔法科高校製作委員会

 冗長に感じるかどうかのさじ加減って本当に難しそうですね。初見だったからそう感じたのかな。2回目みるとまた違うのかもしれません。

  それにしても、大人数で『サービスシーン』を見るのに慣れてきたせいか、恥ずかしさより逆に面白くなっちゃうんですが、さすがに劇場のスクリーンで『謎の光』でてくると笑っちゃいますね。

 あと深雪のバスト・・・えっ・・・誰? 美月じゃなくて?こんなすごいの?・・・え〜っ?って思ってしまった(いまだに勘違いのような気も)

エリカの殺陣が見所、でも九亜がもこっちに見えた


 それにしても前半はほとんど魔法が出てこないので、後半にようやく魔法が出てきたときには『あ、そういえば魔法ものだっけ!』と気づく位でした。(正確に言えば冒頭のスイカ割りで使ってましたけど)

 個人的に一番の見所はエリカたちの殺陣のシーンかな。それまでバトルらしいバトルのない状態から、ために溜めての戦いのシーン。エリカの動きも良くて熱くなりました。

エリカのバトルシーンはかなり力が入っている
個人同士のバトルはやはり見応えがある
©2016 佐島 勤/劇場版魔法科高校製作委員会

 あと本筋と関係ないけど、九亜(ここあ)たち『わたつみシリーズ』の子達が、ワタモテの『もこっち』に見えちゃって途中で笑いを堪えるのが大変でした。

一度『もこっち』に見えたら頭から離れなくなって困った。
©2016 佐島 勤/劇場版魔法科高校製作委員会

 もこっちがいっぱいいる・・・って一度見えちゃうとダメですね。シリアスシーンなのに笑ってしまって。

 他にも、過去を想起させるシーンが挿入されていて、次期TVシリーズへの布石かな?って感じるところもありましたね。原作未読なのでちょっとわからないのですが。

魔法科の面白さとは何だったか


 この作品って、未来の国際政治や軍事について描かれているものの、ご都合主義な部分が多くてリアリティーは重視してないですよね。

 でもこのシリーズの面白さって、そういう所じゃないんですよね。自分が思うTVシリーズの面白い所ってこんな感じだと思います。

  • 現代化された魔法技術自体の面白さ
  • プログラム化された起動式によるバトルの斬新さ
  • 舐めてかかってくる敵をひっくり返すカタルシス感
  • 超優秀な妹を、さらに凌ぐほどの実力を隠している面白さ。
  • 行き過ぎたきょうだい愛と軽いハーレム要素(さすおに感

 こういった点が絡み合っていて、エンターテイメントとしてすごく面白かったんだと思うんですよね。荒唐無稽な世界やご都合主義なのはこれを生かす設定なので気にならなかったんですよね。

魔法技術が兵器と見分けがつきにくい


 劇場版では周りは達也の実力はわかってるし、もうぜんぜん『劣等生』じゃないもんね(笑)設定上の面白さってTVシリーズで使い切ってるわけで、そういう意味ではなかなか難しいんだろうなぁ。

 ただ、今作では魔法技術自体が『単なる超能力』や『兵器』みたいな感じに見えちゃって、魔法科ならではの特徴が見えにくくなってる気がしますね。

起動式とかは一応出るんだけど、魔法技術らしさというより
超能力や通常兵器という感じがしてしまう
©2016 佐島 勤/劇場版魔法科高校製作委員会

 プログラム化された起動式を繰り出す感じが良かったんですよね。あれ試合的な対戦シーンではすごく面白いんですよね。どうやるんだろう?って謎解きゲーム的な面白さもあるし。

 今回は達也がすごい兵器(能力)を使って勝つという感じで、ちょっと一本調子な感じを受けてしまったかな。

 もちろん、最後は達也が勝つって結論で問題ないんですよ。それは絶対なんだけど、ひっくり返してスカッとする感覚というか、カタルシス感を期待しちゃってた部分はありますね。

 劇場版ということで話が大きくなりすぎて、TVシリーズの特徴が見えにくくなった気がします。

ハーレム要素あっての『さすおに』


 もう一つの面白さである行き過ぎたきょうだい愛。いわゆる『さすおに』的シーンは結構ありましたが、ちょっとこれ見よがしに感じちゃったかな。

 あれもTV版(特に1クール)ように、達也が馬鹿にされたり、逆に憧れられたりするからこそ映えるんじゃないかなぁと思いました。

さすおにシーンはたくさんあるものの・・・
ハーレム要素が意外とアクセントになっていたのかもしれない
©2016 佐島 勤/劇場版魔法科高校製作委員会

 愛するお兄様がみんなに馬鹿にされるのは嫌だけど、人気者になりすぎると嫉妬する・・・って深雪の微妙な感情が結構楽しかったんですけどね。

 軽めのハーレム展開ってのが劇場版ではほとんど感じられなかったですよね。まあ、ここまでストーリーが展開しちゃうと難しいのかもだけど。

 ただ、もうちょっと達也の人気に深雪が嫉妬するみたいなの見たかったかも・・・なんて思いました。

OP/EDはもっと力入れて欲しかったなぁ!


 TVシリーズで大好きだったのはオープニングエンディングだったんですよね。特に1クールのはすごく良い出来で、楽曲単体の良さはもちろん、映像とのシンクロが素晴らしかったんですよね。
関連記事 2014年 アニメオープニング ランキング BEST 72 全コメント付 - アニメとスピーカーと(同率9位に魔法科)

 ファンムービーという視点ではキャラのサービスも良いけど、アニメならではのカッコイイOPやEDを期待したかったですね。

 今回の主題歌GARNiDELiAの『SPEED STAR』も、すっごく良い曲じゃないですか。曲自体もすごく良いんだけど、歌詞もストーリーとのシンクロ率が高いんですよね。予告編ではかなり痺れました。

 GARNiDELiA 『SPEED STAR』-YouTube EDIT ver.- 
 GARNiDELiA Official Youtube Channel (公式配信)

 この曲でカッコイイOP/EDを作ってくれたらなぁ・・・通常の映画の体裁ではシンプルなスタッフロールなんでしょうけどね。あれだけ良い曲だったので絵と合わせたOP/EDが見たかったです。

満足度は高いけどさらに上を期待してしまう


 まあちょっとネガティブなことも書きましたけど、終わってみれば決して満足度は低くはないです。キャラを楽しめるというのも本編とは違う外伝的な作品だからできることかもしれないし。

 なんつっても、ほのかと美月が見たかった自分には望外のファンムービーになってました。そういう意味では予想以上に良かったですね。

柴田美月ファンなら相当の満足感を得られる作品なはず
©2016 佐島 勤/劇場版魔法科高校製作委員会

 ただ、もっと『魔法科高校の劣等生 』らしさがあればなぁ・・・とは思いますが、久しぶりで期待値あげすぎたかな?

 自分は原作を読んでない程度の超ライトなファンなので、原作から読み込んでいるコアなファンはどう思っているのか気になるところですね。

 今回は監督が小野学さんから吉田りさこさんに、制作会社もマッドハウスからエイトビットに変わったようですね。

 吉田りさこさんはTVシリーズでも演出に入っていたようですし大きく変更はないのでしょうけど。やっぱり解釈的に影響とかあるんだろうか。

 キャラクターを楽しむという点では高評価なのですが、魔法科ならではの楽しさがもっとあればなぁと・・・期待してしまう作品ですね。次期シリーズも楽しみです。

 もう一度TVシリーズを見直したくなったなぁ。

※なんと来場者プレゼントは第7弾まで予定されているようです(笑)美月のグッズがあったら行ってみようかな・・・。

追記:事前に原作読むのは必須じゃないと思うよ


 他の人の感想をみると『事前に原作読んでおかなきゃダメ』っぽい意見を結構みますね。まだアニメ化されていない『追憶編』とか『来訪者編』を勧めています。

 自分はTV版しか見てませんけど特に問題なく鑑賞できました。金髪のリーナとか米軍の組織スターズとか知らなくても大して問題ないです。リーナの見た目が変わるのは『おや?』と思ったけど『そういう人なんだな』ってわかる様になってたし。

 キャラクターについては公式サイトのキャラクター紹介ページを一通りチェックするだけで準備としては十分だと思います。

 過去のシーンが挿入されるのもフラッシュバック的な回想シーンなので、むしろ知らない方が『何か関係ありそうだ』と想像を巡らせて面白いかも。

 さすがに原作小説読まないと理解できない映画は作りませんよね。おそらく次期テレビシリーズにつながる様になってるし、後々つながりを楽しめる様になってる気がします。

 原作既読のファンから見ると『知ってるだけに心配になる』と思うんですよね。でも自分の様に未読で鑑賞しても『意味不明で置いてきぼり』って事はなかったので安心して大丈夫!だと思いますよ。

原作:佐島勤
キャラクターデザイン/総作画監督:石田可奈
監督:吉田りさこ
脚本:佐島勤/ライトワークス
色彩設計:野口幸恵
アニメーション制作:エイトビット

劇場版 魔法科高校の劣等生 公式サイト

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映画『BLAME!』感想:超ワクワクできるSFエンターテイメント!

 映画『BLAME!』(ブラム)を2回見てきました。これは公開前からすっごく期待してた作品だったんですよね。

 初見ではとにかく『おもしれ〜ッッ!』って唸りましたね。世界が見えてくるにつれてゾクゾクするような感覚。原作未読ですが全然気にならずに楽しめました。

劇場アニメ『BLAME!(ブラム)』本予告① ②より画像引用
当ブログの画像引用について
(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 ポリゴンピクチュアズの映像もさらにグレードアップしてて、セルルックアニメ(※)の技術がまた一段進歩してましたよね。

 個人的に期待度高すぎて相当ハードルをあげちゃってたんだけど、ぜんぜん裏切られませんでしたね。弐瓶作品の魅力とエンターテイメント性が両立した満足度の高い作品でした。

※『セルルック』3DCGで2D表現を再現する技術。3Dモデルは省力化しつつ緻密な表現ができる一方、ディズニー作品のような人形っぽい風合いになる。日本的な2Dアニメの風合いを目指す考え方。(って、アニステで言ってた)

劇場アニメ『BLAME!(ブラム)』本予告②
KING RECORDS(公式配信)
本予告① よりこっちの方が好きな予告ですね。 

※予告以上のネタバレのないレビューですが未見の方はご注意ください

ここまで来たか!セルルックアニメの萌え表現


 『亜人』に続いてまたそこかよ・・・って言われそうですが、いやぁ、驚きましたね。主人公『づる』が最初にヘルメットをはずした時の表情!
関連記事 劇場版 亜人3部 最終章 衝戟 感想:すごいボリューム感と3D萌えの可能性を見た! - アニメとスピーカーと

 スタッフの『これでどうだ!』と気迫を感じるような『萌え顔』(笑)ちょっと過剰じゃないかと思うような瞳ウルウルの表情。 

このシーンは劇場で見ると瞳の透明感に驚いた
大画面でも全く違和感なく、このシーンへの力のいれ方がわかる。
(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 これは度肝を抜かれましたね・・・タイミングも良かったけどね。あのシーンで3Dっぽい違和感を感じちゃったら台無しだもんね。相当気合い入ってました。

 あのシーンで『また一段すごくなってるよ!』って感動しちゃいましたもんね。1作ごとに3Dくささが抜けてきて、セルアニメっぽさ+3DCGならではの表現を追求してるのが伝わってきます。

 あ、でも霧亥(キリィ)は朴訥すぎて『高倉健』かよ・・・って思いました(笑)

萌え以外もすごい映像表現!


 もちろん全部が完璧ってわけじゃなくて、階段の歩き方とかは『なんかちゃんとしすぎ・・・』みたいな違和感もあるんだけど、全体的にかなり少なくなった気がします。

 なによりこの映画館の大画面(大きなULTIRAスクリーンで見たけど)でも破綻や違和感を感じなかったのはすごいです。劇場版『シドニアの騎士』で感じた不満はほぼなかったですね。
関連記事 劇場版 シドニアの騎士 感想:しっかり詰め込んだ総集編 - アニメとスピーカーと

 キャラ以外の描写なんかは、すさまじい完成度のセルアニメを見ているような感じ。自然すぎてわからないけど、アニステの紹介番組を見たら、この自然な感じを出すのにすっごいこだわってるんだなぁってわかりました。

 あと視界のナビゲーション瞳の表示なんかも良かったですね。大スクリーンでも間延び感が無くってキレイ。あれが良い出来だと本当に気分が盛り上がります。

霧亥の視界のナビゲーション
ボケ具合も映画を前提に調整されているのか見え味が素晴らしい。
(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 他にネットスフィアの景色や、最後の火花のシーンは大画面スクリーンに映えましたね。ここは映画館で見て良かったなぁと思いました。緻密かつ広がりのある表現がすごかったです。

弐瓶 勉の独特の世界にワクワク!


 実は自分は、アニメ版『シドニアの騎士』が好きなだけで弐瓶 勉さんの作品については『ニワカ』ファンなので偉そうな事は言えなんですけどね(笑)

 BLAME!もシドニア乗組員が見ている劇中作品だと思ってて・・・二瓶さんの初期の単独作品だって知らなかったほどです(恥)

 あの緻密なんだけどカオスな世界の描きかたや、日本社会を源流にしたような未来世界ってこの作品でもたくさん出てるけど、あれがすっごく好きなんですよね。

 その独特の世界が見られるのもワクワクするポイントですね。

 特に『建設者』って呼ばれる巨大なシロクマみたいなロボット、あれ最高。名前も良いですよね。何作ってんだかわかんないけど建設が続く・・・みたいのもすごく想像力を掻き立てられます

建設者の威容が強調される構図。
スクリーンで見るとその巨大さにこちらもぞっとするほど。
(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 あと人型セーフガードのサナカンが、攻撃するのにイチイチ申請と許可を受けるのもすっごく良いんだよなぁ。
 人間社会の、特に日本の社会システムの名残が超未来のロボットに受け継がれている感じがなんとも言えない面白さがあるんですよね。

 日本語といえば、シボさんの住んでいた都市の景色。ハングルっぽい文字が見えたけどコリアン系をイメージしているのかな?原作ではどうなんだろ。

 超未来でもかわらず隣人かと思うとちょっと笑っちゃうけど、なんか色々想像を掻き立てられる面白さがありますね。


長大な話の一部?なのに、わかりやすいストーリー


 BLAME!の原作コミックは未読なのですが、心配していた意味不明さってのは全く感じなかったですね。難解な作品と聞いていましたけど。

 もちろん映画では世界の全体像とかは全く謎のままで解明されることもないんですけどね。非常に大きな物語の『一つのエピソード』という形ではちゃんと完結していて、全然不満はなかったです。

 短編SFのような後味というか・・・まあ時間は全然短くないですけどね。

 良い感じの緊張感が持続していて長さを感じませんでした。1本の映画として緩急のある構成になってるので単独で楽しめる作品になっていたと思います。

ネットスフィアのシーンは美しいだけでなくSF的にも好きだった。
〜ナノセカンドで切れるけど、みたいな話はワクワクした。
(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 原作ファンの意見を見ると結構いろいろでしたね。きっと原作読んでると背景も分かって面白いのかも。

 でも未読だと全てが謎なので意外と説明不足を感じません。エンターテイメントとして楽しみやすい作品になってたと思いました。

原作は弐瓶さんらしい独特の作品だそうで、コミックの方もかなり興味をそそるんですよね。読むのが楽しみです。

 『予断なく映画を楽しめた』って意味では、コミック読む前に鑑賞できてラッキーだったかもですね。

シリーズ化に期待!ワクワクできる日本産SF作品


 原作はマニアックな作品という評判を聞いてたので拍子抜けしたのですが、やっぱり海外展開とか一般受けを考えて『わかりやすさ重視』で作っている感じではありました。

 でも弐瓶作品の独特の味を損なわずにバランスが取れてる気がしますね。確かにラストこそ若干ベタな感じもしますが・・・是非ともシリーズ化してもらいたいです。

弐瓶作品独特の都市風景が魅力的な作品。
シドニアの騎士よりも広大で機械的な風景が多く楽しめる。
(C)弐瓶勉・講談社/東亜重工動画制作局

 お世辞じゃなくてエンターテイメントとしてはハリウッド映画の『シリーズ作品』と遜色ないと思いますね。ハリウッドのコピーじゃない独自性もあるし。

 ハリウッドのハイパーリアルなCG世界に対抗するには、緻密な描き込みのセルルックアニメが対抗馬になりうる存在かもしれませんね。

 まあ市場としてはアメリカというより、アジアやヨーロッパでしょうが。

 今回はNetflixが映画公開と同時配信ということなので、この形で次作も進めてもらいたいなぁ。

 感涙とかじゃないけど、こういうワクワクできるSF作品が日本から生まれるって本当に嬉しいです!今後も楽しみな作品です。

原作・総監修:弐瓶勉
監督:瀬下寛之/副監督:吉平直弘
脚本:村井さだゆき/色彩設計:野地弘納
制作:ポリゴン・ピクチュアズ

映画『BLAME!』公式サイト:http://www.blame.jp

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映画『夜明け告げるルーのうた』感想:こんなに楽しい作品だと思わなかった・・・。

 映画『夜明け告げるルーのうた』2回目を見てきました。初見で見たときの感想は一言『見逃さないでよかった〜!』でしたね。映画館で見てなかったら絶対後悔してただろうなぁ

(※後半からネタバレありのレビューとなりますのでご注意ください。スキップ可)

『夜明け告げるルーのうた』予告映像より画像引用
©2017ルー製作委員会
当ブログの画像引用について

 いい歳した自分が楽しめる作品かな?って心配してたのですが、こんなにおっさんの心に響く作品だなんて想像もしてなかった。でもあの予告では想像できませんよね(笑)

 映画が始まった瞬間・・・えっ、こんな風に始まるの?という驚き。自然と体が揺れてきて、それに続く素晴らしいオープニング!こうくるかぁ・・・ってちょっと感動しちゃいました。

 アニメのOPが好きなので『これはスゴイなぁ』って唸りましたね。本当に美しくて楽しいオープニングで開始10分で完全に心を掴まれました


『夜明け告げるルーのうた』予告映像
TOHO animation 公式配信

 そしてクライマックスはホント良い感じで泣かされちゃって・・・この作品の感動ポイントって世代や人によってかなり変わってくるかもしれないですね。

 吉田玲子さんが共同脚本に入ってるのを知らなかったんだけど、説教臭さや押し付けがましさを感じさせないストーリーで・・・すごく好きだなぁ。

 ストーリーだけじゃなくて音楽の使い方とか、すごい動きとか・・・見所満載の良い作品でした。これは本当に見てよかったです!

子供向けかと敬遠してたけど・・・


 実は、この時期はちょうど忙しくて正直言ってどうしようかなぁ・・・って感じだったんですよね。他にも見たい作品あったし・・・BLAME!とか(笑)

 たまたま仕事帰りにレイトに行けたんだけど、疲れてたのでとりあえず『夜明け告げるルーのうた』を消化しとくか・・・くらいの気分だったんですよ。(失礼)色彩はキレイそうだし動きが良いって評判だったしね。

 予告見る限りはどうしても『ポニョ』を連想しちゃいますよね。ジブリの2番煎じかなって。しかもポニョより一層子供向けっぽく見えるし・・・(笑)

見る前は子供向けの印象しかなかった人魚のルー。
本編見た後だとこの動きが気持ちよくってたまらない。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 まあ自分向けじゃないよなぁ?と思いつつも、疲れてたのでとりあえず気楽に見られる『ルー』を見とくかって感じでした。

 そしたらこれですよ(笑)冒頭からの掴みは最高。疲れてるのに全然眠くならなくて、見終わった後はなんとも心地よい高揚感で映画館を出ることができました。


『音』とストーリーの一体感が素晴らしい


 この作品で特に一番好きなのは?って聞かれれば『音楽の使われかた』ですね。これはホント最高でした。

 冒頭のサンプリングのリズムや、バンド演奏からのOPとか・・・いわゆる劇伴じゃなくて、構成に組み込まれてる感じ。もうこれが最高に気持ち良い!

バンド仲間のユーホ(遊歩)とクニオ(国夫)
単なる劇中のバンド演奏の枠を超えて音楽が構成に食い込んでいる。
『盛り上げるための劇伴』でなく音が脚本の一部になっているようだった。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 『君の名は。』みたいな『予告編的な音楽の使い方』もすっごく好きなんですけどね。あとHoneyWorksの映画もそうかな(あっちはPVっぽい感じですが)

 でも『ルーのうた』はまた違って『脚本に組み込まれた感じ』でしたよね。ミュージカル風ともまた違うんだよね。なんて言えば良いんだろう・・・。

 同じライブでも『ラブライブ!』とかのアイドル作品とも全然ちがってるんだけど、劇中でノリノリになる感じは全然負けてないっていうか。

 とにかくこの不思議な一体感はすっごい快感でした。

※次章よりネタバレありとなります。未見の方は最終章へスキップ

『楽曲と映像のコラボ』が好きな人は見逃せない作品


 テーマソングの『唄うたいのバラッド』の使われかたもよかったですね。もともと劇中でテーマソングが使われるのが大好物なんだけど。

 本作ではメッセージ性というのもあるんだけど、自分としてはいろんなバリエーションが良かった。最初は同じ曲とは気づかなかったけどルーの歌うバージョンなんかすごく良かったなぁ。

 ちなみにルーが最初に歌う曲はなんでしたっけね?ユーホが怒って居なくなった後に歌う曲・・・あの曲すっごく好きだったなぁ。

 あとは、なんと言ってもOPが最高!短いのに凄く充実してて、色彩も美しくて、踊りだしたくなる感じ。『もっと長く〜おわらないで!』って思いました。

 予告編とかオープニングとか『楽曲と映像のコラボ』が好きな人は本当に楽しめる作品だと思います。

たこ婆さんで号泣しちゃった・・・


 それにしても『たこ婆さん』のシーン。もう最高ですね!思いっきり感動しちゃいましたよ。

伏線になってるとは思ったけど・・・まさかたこ婆さんで一番泣くとは。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 この作品って感動ポイントは人それぞれかも。自分の場合は『たこ婆さん』と『お爺ちゃん』のシーンでしたね。ここはハンパなかった・・・。

 序盤でたこ婆さんが『伏線』になってる感じはありましたけどね・・・ルーで泣かせに来るのかなぁと思ったら、まさかこっちでくるかぁ〜って感じ(笑)

 船を操る勇ましいたこ婆さんのシーン。ダイナミックでやたらとカッコ良いシーンから一転、鮮やかに感動シーンに切り替わるのはすごいなぁ。グッと目頭が熱くなりました。

海の男ならぬ海の婆さん。猛烈にカッコイイシーン。
でもまさかこの直後に号泣させられるとは・・・。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 でも、まさか、たこ婆さんが持ってかれるとは予想外で・・・あのシーンきた時は完全に不意打ちで『ぶぁぁぁっ』って感じで涙腺崩壊してしまいましたね。

 ああ、たこ婆さんは帰ってこない・・・文字通り向こうの世界で幸せになったんだって思うと完全にヤラレちゃいました。

気持ち良く繋がる『傘の伏線』


 その後のお爺ちゃんのシーンも感動でしたが、2度目に見た時は人魚のために傘を持っていくのに気付きました。たこ婆さんと違ってお爺ちゃんは人魚を見てピンと来てたんですね。そこでまた感動しちゃました。

全編にわたって傘が重要な伏線になっていて
終わってみると色んなシーンが繋がってくる気持ちの良い構成。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 早い段階から傘が伏線になっててキレイに回収される構成が素晴らしいですよね。ちなみにラストでは街に傘が飾られれたけど、もしかして光るウニの代わりに傘を飾る習慣に変わったのかなぁ・・・なんて思って見てました。

ユーホがかわいく見える不思議


 もちろん評判だった『動き』も素晴らしかったですよね。フラッシュアニメ併用の独特の動きだけど、全然安っぽくなくて面白い動き。最初に踊るルーの動きがすっごく好きで見てるだけで楽しくなってきます

 あと、特徴的なのはキャラクターのシンプルな線ですよね。同級生のユーホ(遊歩)なんか、『あの花』の安城鳴子を簡略化したみたいなキャラで、見る前は全然萌えないしなんだかなぁ・・・って感じでした。

緻密な背景と対照的なキャラクターの描きかた。
シンプルな線で陰影も少ないのに生き生きと立体的にみえた。
PVより ©2017ルー製作委員会

 でも本編見てみると、シンプルな線で陰影もないのに、丸みを帯びた顔が表現されてたり、動きも奥行きを感じるし・・・なによりユーホが可愛く見えてくる不思議(笑)

 逆に背景画はしっかり細部まで描いた水彩画のような表現で、シンプルなキャラと極端な違いが独特の面白さでした。 

ルー役の『谷花音』さんってすごい・・・


 メインキャラの『ルー』も、予告では『なんだかよく分からないキャラだなぁ・・・』と思ってたけど、本編みると可愛く見えてくるんですよねぇ。不思議だなぁ。

 これは動きの良さもあるけど、声優の『谷花音』さんの力も大きいですよね。彼女まだ13歳でしょ?本当にうまいなぁ・・・。

ルーの素晴らしさは『動きの良さ』もさることながら
谷花音さんの演技による所も大きいと思う
PVより ©2017ルー製作委員会

 『君の名は。』四葉の役だったのでうまいのは知ってましたけどね。とはいえ子役だからって子供の人魚の役ってベタすぎないか・・・なんて思ってたけど本当にピッタリでした。

 四葉の時も思ったんだけど、リアルな『子供っぽさ』と声優さんの『プロっぽさ』いい意味で両立してる感じなんですよね。こんなファンタジーキャラでもその才能を発揮しててベストなキャスティングでした。

単なるファンタジー・成長物語に留まらないストーリー


 見る前はありふれた成長物語というか・・・ちょっと説教くさい子供向けの話かな?って思ってましたが、いい意味で裏切られましたね。

 産業に行き詰まった港町の対立、東京への若者の流出、地元の魅力を再発見、愛着と回帰・・・・ファンタジー作品のようで『時代の空気』を無理なく織り込んでました。

 特に津波を連想させるシーンを大きく取り上げるのは勇気のいる事だったと思います。『君の名は。』も3.11以降の作品らしさがあったけど、それよりもずっと直接的な表現だったしね。(ある程度時間のたった)今だからこそチャレンジできた表現かも。

 でも、こういうのを説教臭くならない感じで表現できてるのがすごいなぁ。自然に織り込んでるですよね。この辺はやっぱり吉田玲子さんの手腕もあるんじゃないかなぁって思うんですよね。

大人にこそ響くストーリーかも


 Twitter見てたら『主人公のカイに感情移入できない』って意見も見たけど、この辺は年代によって随分印象がちがうかも。二十歳くらいだとカイに感情移入しようとしちゃうのかな?

 自分は離れた視点で見られるせいか、むしろあのアンバランスな感じが若さのリアリティを感じたりして。

感情の変化が激しい主人公のカイ。
若くして複雑な事情も抱えている彼の余裕のなさからくるものだと思う
oricon 公式配信『歌うたいのバラッド』〜より
 ©2017ルー製作委員会

 40過ぎのおっさんにも、いやおっさんだからこそ感動しちゃうのかも・・・。そういう意味では、良い歳した大人にこそオススメしたいかな。(もちろん子供も楽しめるでしょうけど)

 予告みて『自分が見る作品じゃない』と勘違いしちゃった人もいるかもしれない。あるいは映画『夜は短し歩けよ乙女』をみて、ちょっと難解な作品を作る人と勘違いしちゃった人もいたかも。

 でもこの作品は、どの年代でもきっとそれぞれ感じるところのある作品で、特に自分のような年代にはきっとガツンときてしまう作品。

 斬新なのに踊りだしたくなるような楽しさで、感動してスッ・・・と終わる、切なくとも爽やかな後味

 これは本当に食わず嫌いしないで良かった・・・と思う素敵な作品でした。

追伸:NHK『クローズアップ現代+』でホワイトな職場環境のアニメ製作会社として(ポリゴンピクチュアズと共に)紹介されていましたね。フラッシュアニメの活用方法も紹介されていました。やっぱり観客としても現場のスタッフが元気だと見ていて気持ち良いですよね。

映画『夜明け告げるルーのうた』公式サイト

監督:湯浅政明
脚本:吉田玲子/湯浅政明
音楽:村松崇継
キャラクターデザイン・作画監督:伊東伸/美術監督:大野広司
フラッシュアニメーション:アベル・ゴンゴラ/ホアンマヌエル・ラグナ
アニメーション制作:サイエンスSARU
配給:東宝映像事業部

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埋め込み動画は著作権法違反?引用画像の『Twitterカード』や『サムネイル』表示は合法?直リン不法行為問題まで考えてみた。

以前書いた画像引用についての記事で質問がありました。

Q:引用の基準に従い合法的に画像を引用した記事だとしても、次のような画像は著作権法的に問題ありませんか?(質問コメントはこちら)
  • ブログ記事を紹介したTwitterカードの画像は?
  • ブログ内における記事一覧のサムネイル画像は?
このブログの記事リンクのサムネイル画像
ここに引用したアニメ画像が出た場合は著作権法上の問題になるのか?

 このブログでもTwitterカードで記事を紹介したり、ブログ内に記事リンクのサムネイル画像があります。この画像は著作権法上の問題はないのでしょうか?

 結論から言えばもちろん合法として説明できます

 ただし、この問題がピンポイントで判断された事はないので、他の裁判例を援用したり解説文献を参考にしたりして説明します。

 あくまで当ブログの方針ですのでご注意ください。参考にしていただくのは構いませんが、個々のブログの条件によっても解釈は変わります。問題点などお気づきの場合はコメント欄などでお気軽にご指摘ください。

 もう一つ、別のコメントで問題提起がありましたが『YouTubeの動画をブログ記事に埋め込む場合』の著作権問題。こちらは前提知識として重要なので最初に検討してみたいと思います。
参 考 アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント - アニメとスピーカーと‥:元記事です。画像引用の基準などはこちらをご覧ください。

※2017/6現在の情報に基づいた記事です。判例変更などにより解釈が変わる可能性がありますのでご注意ください。更新情報は記事下に追記する予定です。

【目次】
埋め込み動画と公衆送信の問題
 ・公式動画をブログに埋め込んでも著作権違反?
 ・JASRACの主張する使用料請求の基準
 ・JASRACの主張の問題点とは
 ・裁判所との考え方の違いをまとめると
 ・JASRACの包括契約を否定するものではないけど
 ・現状の未確定状態が維持されるのでは
 ・【公衆送信における裁判例資料】

Twitterカード画像の著作権問題
 ・ブログ記事紹介の『Twitterカード』画像の著作権問題
 ・Twitterカードは埋め込み動画と同じ仕組み
 ・Twitterカード自体では複製や公衆送信にならない

ブログ内サムネイル画像の著作権問題
 ・同じブログ内のサムネイル画像は問題無いか?
 ・直リンク画像で『不法行為』が問われる事は無いか?
 ・不法行為が問われる『直リンク画像』の悪用
 ・関連ページプラグインのMilliardは画像の複製では?
 ・Milliardは検索事業者と考えれば問題ない
 ・最後に

公式動画をブログに埋め込んでも著作権違反?


 まずは前提知識としてこの問題を説明する必要があります。みなさんもYouTubeなどの動画をブログ記事に埋め込む事ができるのはご存知かと思います。

 規約に従う事が前提ですが、登録者なら誰でも共有ボタンをクリックすれば簡単に埋め込み用のURLの入ったコードがもらえます。ブログにそのコードを挿入するだけで下のように動画を表示できます。

このような感じでプレイヤーが表示されます。
この動画のように権利者は外部サイトでの再生に制限をつける事もできます。
(劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女/本予告)
アニプレックス公式配信

 YouTubeでは違法アップロードも多いですが、権利を持っている公式な動画も多数あります。違法動画のブログ埋め込みはあまり褒められた話ではありませんが、公式配信であればブログで紹介している方も多いのではないでしょうか。

 しかし、この場合JASRACの見解では公式動画(管理する楽曲・歌詞を含む動画に限る)であっても、著作権法の公衆送信権の侵害にあたるとして利用契約を求められる可能性があります
外部サイト 動画投稿(共有)サイトでの音楽利用(JASRAC):中段の『埋込の方法で外部のサイトで利用する場合』で説明 

JASRACの主張する使用料請求の基準


 JASRACは次のような場合は埋め込み動画があっても使用料が免除されると説明しています。逆に言えばこれ以外は利用契約を結んでくださいという事です。

  • アフィリエイト広告を自ら設置していない完全な非営利ブログは免除。
  • 包括契約を結んでいるブログサービス利用者は免除。
  • 埋め込み動画でなく『単なるリンク』なら対象外(下記インタビュー記事より)
  • ただし『すべてに対しダメ出しするのは非現実的な話』として多少のアフィリエイト収入のある程度の個人に対しては積極的には請求しない趣旨の発言をしている。(同記事より)実際に『埋め込み動画だけ』で請求された事例は見つかりません。
外部サイト 有名アーティストの動画をブログに埋め込んだら使用料を請求されるのか? (ITmediaビジネス):法的根拠については言及がないものの非常に参考になる記事。

 つまり『アフィリエイト広告で利益を上げているなら利用料を支払ってください』という事です。ちなみに個別の利用料はおそらく売り上げの3.5%(月額最低5,000円から)だと思われます(JASRAC 使用料早見表

外部サイト YouTube動画を埋め込むだけでJASRACに使用料を支払わないといけない?! - ハングルノート:利用料についてJASRACに直接問い合わせをなさっていて参考になりました。

 ※ちなみに動画であっても『引用の基準』を満たしているものであれば当然除外されます。ここでは引用に当てはまらない公衆送信を想定しています。

 ※この最低利用料は大多数のブロガー(私も含む)には高額なので、包括契約をしているブログサービスを利用する事を暗に勧めているのだと思います。

 民法上は契約自由の原則がありますのでJASRACと合意があれば個別契約を結ぶ事自体は何も問題はありません。しかし上記のJASRACの主張は一部重大な法的問題を抱えています。

JASRACの主張の問題点とは


 それは『ロケットニュース24動画リンク名誉毀損事件』での判断です。

 2013年に大阪地裁であった名誉毀損の裁判です。この裁判でJASRACは無関係なのですが、著作権法の『公衆送信権』(2条1項9号)で重要な判断がありました。

 詳しくは下記の判決文や解説サイトをご覧いただきたいのですが、今回関係するポイントは次の通りです。
  • ブログ管理者は単に動画URLを含むコードを挿入したに過ぎない。
  • 動画サイト(ニコ動)の埋め込みプレイヤーもリンクと同じである。
  • 動画はニコ動のサーバーから閲覧者に直接送信されている。
  • 動画の管理者はニコ動のユーザーでありブログ管理者ではない。
  • よってブログ管理者は公衆送信権を侵害していない

 さらに、この動画はいわゆる『違法アップロード』の動画だったので、リンクを貼る行為が幇助(違法行為の手助け)に当たるのではないかとの論点がありましたが、これすら裁判所は『直ちに違法になるとは言い難い』と判断しました。

 この判断から考えると、違法アップロードではない『公式動画』を埋め込む事が『公衆送信権の侵害』に当たるという主張は認められない可能性が極めて高いと思われます。(もちろん複製権(21条)も侵害していません)

裁判所との考え方の違いをまとめると


JASRACの主張
 動画の埋め込み(エンベッド)は埋め込んだブログ管理者による公衆送信である。
 【ロケットニュース24事件における裁判所の判断
 動画の埋め込み(エンベッド)では、ブログ管理者が動画を公衆送信しているとは言えない。公衆送信しているのはあくまで動画配信元の管理者である。

 同じような理屈ですが、MERY騒動において『画像の直接リンク』によって無断転載を逃れようとする手口について弁護士が解説していました。

 この公衆送信権の問題については知財の実務家においても一般的な認識であるようです。学説でもこの点を強く否定するものは無いようです。

JASRACの包括契約を否定するものではないけれど


 とはいえ、JASRACのブログサービス向けの包括契約は、埋め込み動画以外にも(歌詞など)幅広い利用が可能なものであり、利用目的によっては個人に配慮した良い制度です。

 紛争の可能性をゼロにしたい場合は包括契約のあるブログサービスを選ぶべきですし、個別に契約を結ぶ事を否定するものではありません。

 ただし『公式動画の埋め込み』に限って言えば上記の説明の通り権利を侵害しているとは思えません

現状の未確定状態が維持されるのでは


 私のブログでは公式動画に限って埋め込みプレイヤーを利用しています。(このブログは包括契約がされていないGoogle Bloggerです)

 もしもJASRACから契約を迫られた場合は上記の主張で争うしかありませんね・・・争いたくはありませんが(笑)

 とは言えJASRACがわざわざこの事案を確定させる利益があるかどうかは疑問です。権利者としても現在の未確定な状態が最も有利であると思います。

 そもそもYouTube自体が包括契約でJASRACに支払いをしているうえ、YouTubeの利用規約では『動画を埋め込んだだけで、意図的に広告収入を得ようとするだけ』の利用は禁止されています。(YouTubeヘルプより)

 現実問題として『適正な公式動画の埋め込み』が『権利者が本来得るべき利益』を奪っているとは言えないわけです。ただし公式に容認するメリットもない・・・個人ブロガーへの請求事例が見当たらないのもその辺の微妙な判断があるのかもしれません。

【公衆送信における裁判例資料】

 この項で参考になる資料・記事はこちらです。

ブログ記事紹介の『Twitterカード』画像の著作権問題


 長い前置きになりましたが、今回の本題であるTwitterカードの著作権問題について検討してみます。

 Twitterカードというのはブログ記事のリンクをTwitterで書き込んだ場合に表示される『カード状の紹介文』です。FaceBookとかでもありますね。

 この紹介文にはその記事で使われている画像が表示される場合があります。大きさは設定によりますが私のブログの場合は小さめのサムネイル状です。

次のようなのがTwitterカードの例です。


 この画像がアニメの画像だった場合、著作権法的にどうなの?という質問でした。

 まず前提として元記事の画像が『引用の基準』を満たしている事とします。その上で、Twitterカードの表示を見るとどうでしょうか。

 Twitterカードは画像と本文の一部のみで権利者の記載が不明瞭。これ単体で引用の基準を満たしているとするのは難しそうです。

 仮に著作権者の表示がカード内に表示されたとしても、必然性の点でもやや弱く『常に引用の基準を満たしている』とまでは言えないでしょう。

 しかしTwitterカードについては引用とは別の論理の方が合法性に説得力があります。

Twitterカードは埋め込み動画と同じ仕組み


 勘の良い方なら先刻ご承知だと思いますが、冒頭で紹介した埋め込み動画の裁判例と同じ考え方が適用できます。簡単に当てはめて見るとこのようになります。。

  • ユーザーはTwitterにURLを入力しただけで複製もアップロードもしない。
  • TwitterカードはURLを参照して表示しているに過ぎない。
  • 画像はブログのサーバーからTwitter閲覧者に直接送信されている。
  • Twitterカードに表示されているだけでは公衆送信権を侵害していない
  • 元記事の合法性は引用の基準を満たしていれば問題にならない。

 次の項で具体的に説明してみます。

Twitterカード自体では複製や公衆送信にならない


 Twitterの通常の画像投稿の場合は、画像をTwitterにアップロードしてTwitterのサーバーから送信されるので複製権公衆送信権が問題となります。

 しかしTwitterカードではユーザーは単にURLを記載するのみにとどまり何もアップロードしていません。TwitterがURLからリンク先の記事を参照して画像を枠内に表示しているだけです。

【Twitterカードのしくみ】
Twitterには単にブログ記事のURLを入力するだけであり、Twitterカードの画像はブログ記事の画像を直接表示しているに過ぎない。あくまで送信元はブログであり複製も再送信も行われていない。


 実際に自分のブログ記事の画像を差し替えてみましたが、Twitterカードの画像もリロードするとすぐに差し変わりました。HTMLソースでも単にURLからの表示に見えます。

 結論としては、Twitterカードに表示される画像については、引用などの例外規定を使うまでもなく著作権の問題は生じないという事になります。

通常のツイートでアニメ画像をアップする場合はこの論理は適用されませんのでご注意ください。この場合は画像引用の基準に当てはまるかどうかが問題になります。引用となるかは内容によるので一概に言う事はできません。

同じブログ内のサムネイル画像は問題無いか?


 続いてもう一つの質問『同じブログ内の記事紹介のサムネイル画像』について検討してみます。

 このブログですとPC画面はサイドバースマホでは記事下にありますね。このサムネイル画像に著作権上の問題は生じるでしょうか

 これもTwitterカードと同様に考えてみます。

  • URLの入力は自動生成だが画像を改めてアップロードしていない。
  • 画像はブログの元記事から参照して表示されている。
  • サムネイル表示は直接リンクと同様で公衆送信権を侵害していない。
  • 元記事の合法性は引用の基準を満たしているので問題にならない。

 実際にBloggerで記事の画像を差し替えてみたところ、すぐにサムネイルの画像が変わりました。HTMLソースを確認しても記事を参照して画像リンクを生成しているようです。つまり直接リンクの画像と同じで公衆送信権の問題にはなりません

【Bloggerサムネイル】
記事内サムネイルは自動生成だが複製は行われず、URL先の記事から直接リンクで表示しているに過ぎない。

 しかしTwitterカードと違いちょっとモヤモヤする所があるかもしれません。つまり引用目的でアップロードした画像なのに、自己の管理する別の場所に表示される事に問題は無いのか?という事です。

直リンク画像で『不法行為』が問われる事は無いか?


 直リンク画像を著作権法で問いにくいとはいえ、民法上の不法行為責任(他人の権利を侵害した場合の賠償責任)を問える余地があります。詳しくは下記の弁護士の解説が参考になります。
外部サイト MERYやWELQ問題を受けて押さえておきたい、画像直リンクと画像無断使用の違法性 - STORIA法律事務所:後半の『画像直リンクでも違法になるケースはある』に解説

 不法行為が認められるにはいくつもの要件がありケースバイケースになりますが、不当な利益を得るために故意で悪質な場合ほど認められる可能性は高くなると思われます。

 著作権違反を回避するため、他人の著作物から不当な利益を得るため、他人のサーバーに負担をかける・・・などでしょうか。

 今回の『ブログ内サムネイル画像』の場合では、自己管理のサーバーで、目的はブログ内の記事のリンク表示、サムネイル利用によって収入を得る事はない、元の記事は合法的な引用・・・などと考えると不法行為が成立する可能性は低いと考えています。

不法行為が問われる『直リンク画像』の悪用


これを悪用して『合法的に画像引用したブログ記事』から、関係ない別の記事を作って直接リンクで大量の画像を表示させる場合はどうでしょうか。

直リンク画像でも『著作権を回避する目的』で他人の権利を侵害して利益を得ていたなら『民法上の不法行為』が成立する余地がある。

 仮に自己管理のサーバーだったとしても、明らかに著作権を回避する目的で利用し、広告収入を得るために表示していたのなら不法行為が成立する余地があると考えます。(詳しい議論は本論とは離れるので割愛します)

 いずれにせよ直リンク方式のサムネイルであれば法的な問題は生じないとするのが結論です。だた、ここでもう一つ問題が・・・直リンク方式ではない記事サムネイル画像も使用されているのです。

関連ページプラグインのMilliardは画像の複製では?


 無料で関連記事のサムネイルリストをつくってくれる『Milliard関連ページプラグイン』このブログでも公式のサムネイルとは別枠で導入しています。

 このMilliardは記事の画像を変更してもすぐにはサムネイル画像が変更されないのです。という事はMilliardのサーバーに画像が蓄えられてそこから送信している可能性があります。
Milliard関連ページは画像を一度自己のサーバーに取り込んで再送信しているように見える。

 記事とは別のサーバーからの送信となるとこれまでの話とは変わってしまいます。つまり公衆送信権の侵害となってしまいますが・・・ここでは著作権法47条の6が適用されると考えます。

Milliardは検索事業者と考えれば問題ない


 平成21年改正で新設された著作権法47条の6は検索エンジンについての規定が明文化されたものです。これによってGoogleなどの検索サイトによる著作物の複製や送信の合法性が明確化されました。(※それ以前も特に違法とされていたわけではなく一部不明確な部分があったという事です)
外部サイト (条文)第47条の6 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等:CRIC (公社)著作権情報センター

 この条文は長くてとても読みにくいのですが、下記の解説書を読むと『検索サービス事業者』の定義にはMilliardも十分当てはまるように見えます。
外部サイト 平成 21 年著作権法改正のポイント』 :情報大航海プロジェクト(経産省主導の官民共同プロジェクト)の一環で作成された事業者向け解説書です。

 Milliardは私のブログを『自動で検索して任意の順序で並べて表示する機能』を提供しており定義としてはそれで十分なようです。

 検索事業者による著作物の収集や表示は著作権の例外規定なので、Milliardの表示するサムネイル画像も問題ない事になります。(Googleの画像検索と同じという事ですね)

 Milliard以外の関連記事サービス、たとえば『zenback』やGoogleアドセンスの『関連コンテンツ』は私は使っていないのでわかりません。


最後に


 長くなりましたがどうでしょうか?以上が3つの問題『公式動画の埋め込み』『Twitterカードの画像』『ブログ内のサムネイル』についての法的問題の説明でした。

 どの問題も解釈の余地はあると思いますが無理筋な論理ではないと思います。基本的に裁判例や学説に反する事もないと思います。

 どれもごく当たり前になされている事で実害を被って問題になっているわけではありません。ただ細い点まで法的にはっきりさせて運営したい人には参考になるかもしれませんね。

 個々の事情によって前提が変わりますので参考にする場合も慎重にご検討ください。

 私の気づいていない点や見落としている事があれば、ぜひコメント欄やツイッター、はてなブックマークなどでご指摘いただけると嬉しいです。

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