Q:引用の基準に従い合法的に画像を引用した記事だとしても、次のような画像は著作権法的に問題ありませんか?(質問コメントはこちら)
- ブログ記事を紹介したTwitterカードの画像は?
- ブログ内における記事一覧のサムネイル画像は?
このブログの記事リンクのサムネイル画像 ここに引用したアニメ画像が出た場合は著作権法上の問題になるのか? |
このブログでもTwitterカードで記事を紹介したり、ブログ内に記事リンクのサムネイル画像があります。この画像は著作権法上の問題はないのでしょうか?
結論から言えばもちろん合法として説明できます。
ただし、この問題がピンポイントで判断された事はないので、他の裁判例を援用したり解説文献を参考にしたりして説明します。
あくまで当ブログの方針ですのでご注意ください。参考にしていただくのは構いませんが、個々のブログの条件によっても解釈は変わります。問題点などお気づきの場合はコメント欄などでお気軽にご指摘ください。
もう一つ、別のコメントで問題提起がありましたが『YouTubeの動画をブログ記事に埋め込む場合』の著作権問題。こちらは前提知識として重要なので最初に検討してみたいと思います。
参 考 アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント - アニメとスピーカーと‥:元記事です。画像引用の基準などはこちらをご覧ください。
※2017/6現在の情報に基づいた記事です。判例変更などにより解釈が変わる可能性がありますのでご注意ください。更新情報は記事下に追記する予定です。
【目次】
埋め込み動画と公衆送信の問題・公式動画をブログに埋め込んでも著作権違反?
・JASRACの主張する使用料請求の基準
・JASRACの主張の問題点とは
・裁判所との考え方の違いをまとめると
・JASRACの包括契約を否定するものではないけど
・現状の未確定状態が維持されるのでは
・【公衆送信における裁判例資料】
Twitterカード画像の著作権問題
・ブログ記事紹介の『Twitterカード』画像の著作権問題
・Twitterカードは埋め込み動画と同じ仕組み
・Twitterカード自体では複製や公衆送信にならない
ブログ内サムネイル画像の著作権問題
・同じブログ内のサムネイル画像は問題無いか?
・直リンク画像で『不法行為』が問われる事は無いか?
・不法行為が問われる『直リンク画像』の悪用
・関連ページプラグインのMilliardは画像の複製では?
・Milliardは検索事業者と考えれば問題ない
・最後に
公式動画をブログに埋め込んでも著作権違反?
まずは前提知識としてこの問題を説明する必要があります。みなさんもYouTubeなどの動画をブログ記事に埋め込む事ができるのはご存知かと思います。
規約に従う事が前提ですが、登録者なら誰でも共有ボタンをクリックすれば簡単に埋め込み用のURLの入ったコードがもらえます。ブログにそのコードを挿入するだけで下のように動画を表示できます。
このような感じでプレイヤーが表示されます。
この動画のように権利者は外部サイトでの再生に制限をつける事もできます。
この動画のように権利者は外部サイトでの再生に制限をつける事もできます。
(劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女/本予告)
アニプレックス公式配信
YouTubeでは違法アップロードも多いですが、権利を持っている公式な動画も多数あります。違法動画のブログ埋め込みはあまり褒められた話ではありませんが、公式配信であればブログで紹介している方も多いのではないでしょうか。
しかし、この場合JASRACの見解では公式動画(管理する楽曲・歌詞を含む動画に限る)であっても、著作権法の公衆送信権の侵害にあたるとして利用契約を求められる可能性があります。
外部サイト 動画投稿(共有)サイトでの音楽利用(JASRAC):中段の『埋込の方法で外部のサイトで利用する場合』で説明
JASRACの主張する使用料請求の基準
JASRACは次のような場合は埋め込み動画があっても使用料が免除されると説明しています。逆に言えばこれ以外は利用契約を結んでくださいという事です。
- アフィリエイト広告を自ら設置していない完全な非営利ブログは免除。
- 包括契約を結んでいるブログサービス利用者は免除。
- 埋め込み動画でなく『単なるリンク』なら対象外(下記インタビュー記事より)
- ただし『すべてに対しダメ出しするのは非現実的な話』として多少のアフィリエイト収入のある程度の個人に対しては積極的には請求しない趣旨の発言をしている。(同記事より)実際に『埋め込み動画だけ』で請求された事例は見つかりません。
外部サイト 有名アーティストの動画をブログに埋め込んだら使用料を請求されるのか? (ITmediaビジネス):法的根拠については言及がないものの非常に参考になる記事。
つまり『アフィリエイト広告で利益を上げているなら利用料を支払ってください』という事です。ちなみに個別の利用料はおそらく売り上げの3.5%(月額最低5,000円から)だと思われます(JASRAC 使用料早見表)
外部サイト YouTube動画を埋め込むだけでJASRACに使用料を支払わないといけない?! - ハングルノート:利用料についてJASRACに直接問い合わせをなさっていて参考になりました。
※ちなみに動画であっても『引用の基準』を満たしているものであれば当然除外されます。ここでは引用に当てはまらない公衆送信を想定しています。
※この最低利用料は大多数のブロガー(私も含む)には高額なので、包括契約をしているブログサービスを利用する事を暗に勧めているのだと思います。
民法上は契約自由の原則がありますのでJASRACと合意があれば個別契約を結ぶ事自体は何も問題はありません。しかし上記のJASRACの主張は一部重大な法的問題を抱えています。
JASRACの主張の問題点とは
それは『ロケットニュース24動画リンク名誉毀損事件』での判断です。
2013年に大阪地裁であった名誉毀損の裁判です。この裁判でJASRACは無関係なのですが、著作権法の『公衆送信権』(2条1項9号)で重要な判断がありました。
詳しくは下記の判決文や解説サイトをご覧いただきたいのですが、今回関係するポイントは次の通りです。
- ブログ管理者は単に動画URLを含むコードを挿入したに過ぎない。
- 動画サイト(ニコ動)の埋め込みプレイヤーもリンクと同じである。
- 動画はニコ動のサーバーから閲覧者に直接送信されている。
- 動画の管理者はニコ動のユーザーでありブログ管理者ではない。
- よってブログ管理者は公衆送信権を侵害していない。
さらに、この動画はいわゆる『違法アップロード』の動画だったので、リンクを貼る行為が幇助(違法行為の手助け)に当たるのではないかとの論点がありましたが、これすら裁判所は『直ちに違法になるとは言い難い』と判断しました。
この判断から考えると、違法アップロードではない『公式動画』を埋め込む事が『公衆送信権の侵害』に当たるという主張は認められない可能性が極めて高いと思われます。(もちろん複製権(21条)も侵害していません)
裁判所との考え方の違いをまとめると
【JASRACの主張】
動画の埋め込み(エンベッド)は埋め込んだブログ管理者による公衆送信である。
【ロケットニュース24事件における裁判所の判断】
動画の埋め込み(エンベッド)では、ブログ管理者が動画を公衆送信しているとは言えない。公衆送信しているのはあくまで動画配信元の管理者である。
同じような理屈ですが、MERY騒動において『画像の直接リンク』によって無断転載を逃れようとする手口について弁護士が解説していました。
この公衆送信権の問題については知財の実務家においても一般的な認識であるようです。学説でもこの点を強く否定するものは無いようです。
JASRACの包括契約を否定するものではないけれど
とはいえ、JASRACのブログサービス向けの包括契約は、埋め込み動画以外にも(歌詞など)幅広い利用が可能なものであり、利用目的によっては個人に配慮した良い制度です。
紛争の可能性をゼロにしたい場合は包括契約のあるブログサービスを選ぶべきですし、個別に契約を結ぶ事を否定するものではありません。
ただし『公式動画の埋め込み』に限って言えば上記の説明の通り権利を侵害しているとは思えません。
現状の未確定状態が維持されるのでは
私のブログでは公式動画に限って埋め込みプレイヤーを利用しています。(このブログは包括契約がされていないGoogle Bloggerです)
もしもJASRACから契約を迫られた場合は上記の主張で争うしかありませんね・・・争いたくはありませんが(笑)
とは言えJASRACがわざわざこの事案を確定させる利益があるかどうかは疑問です。権利者としても現在の未確定な状態が最も有利であると思います。
そもそもYouTube自体が包括契約でJASRACに支払いをしているうえ、YouTubeの利用規約では『動画を埋め込んだだけで、意図的に広告収入を得ようとするだけ』の利用は禁止されています。(YouTubeヘルプより)
現実問題として『適正な公式動画の埋め込み』が『権利者が本来得るべき利益』を奪っているとは言えないわけです。ただし公式に容認するメリットもない・・・個人ブロガーへの請求事例が見当たらないのもその辺の微妙な判断があるのかもしれません。
【公衆送信における裁判例資料】
この項で参考になる資料・記事はこちらです。
- 裁判所判例情報 (ロケットニュース24事件 判決文PDF)
- ロケットニュース24動画リンク名誉毀損事件-著作権 損害賠償等請求事件判決(知的財産裁判例集)- 駒沢公園行政書士事務所日記:わかりやすく要旨をまとめている。
- 第一東京弁護士会 総合法律研究所 知的所有権法研究部会 (発表レジュメPDF):学説まで言及した判決文の解説。
- ニコニコ動画事件 - 大家重夫の世情考察(久留米大学名誉教授):要旨が簡潔に理解できる。
- ブログを書くときに注意すべき著作権 - IPF Biz:弁理士のブログ。後半の『動画のエンベッド』にJASRACとの関連について見解。
- MERYやWELQ問題を受けて押さえておきたい、画像直リンクと画像無断使用の違法性 - STORIA法律事務所:画像直リンクの法的解説。
ブログ記事紹介の『Twitterカード』画像の著作権問題
長い前置きになりましたが、今回の本題であるTwitterカードの著作権問題について検討してみます。
Twitterカードというのはブログ記事のリンクをTwitterで書き込んだ場合に表示される『カード状の紹介文』です。FaceBookとかでもありますね。
この紹介文にはその記事で使われている画像が表示される場合があります。大きさは設定によりますが私のブログの場合は小さめのサムネイル状です。
次のようなのがTwitterカードの例です。
ブログ更新しました。よかったら読んでください!— kato19@アニメとスピーカーと‥‥。 (@id_kato_19) 2016年12月15日
『アニソンに適した開放的な音質のヘッドホン 14機種の比較試聴メモを公開します』新しいヘッドホン探しに悩みまくってます(笑)#ハイレゾ https://t.co/SA7CQxZbYc
この画像がアニメの画像だった場合、著作権法的にどうなの?という質問でした。
まず前提として元記事の画像が『引用の基準』を満たしている事とします。その上で、Twitterカードの表示を見るとどうでしょうか。
Twitterカードは画像と本文の一部のみで権利者の記載が不明瞭。これ単体で引用の基準を満たしているとするのは難しそうです。
仮に著作権者の表示がカード内に表示されたとしても、必然性の点でもやや弱く『常に引用の基準を満たしている』とまでは言えないでしょう。
しかしTwitterカードについては引用とは別の論理の方が合法性に説得力があります。
Twitterカードは埋め込み動画と同じ仕組み
勘の良い方なら先刻ご承知だと思いますが、冒頭で紹介した埋め込み動画の裁判例と同じ考え方が適用できます。簡単に当てはめて見るとこのようになります。。
- ユーザーはTwitterにURLを入力しただけで複製もアップロードもしない。
- TwitterカードはURLを参照して表示しているに過ぎない。
- 画像はブログのサーバーからTwitter閲覧者に直接送信されている。
- Twitterカードに表示されているだけでは公衆送信権を侵害していない。
- 元記事の合法性は引用の基準を満たしていれば問題にならない。
次の項で具体的に説明してみます。
Twitterカード自体では複製や公衆送信にならない
Twitterの通常の画像投稿の場合は、画像をTwitterにアップロードしてTwitterのサーバーから送信されるので複製権や公衆送信権が問題となります。
しかしTwitterカードではユーザーは単にURLを記載するのみにとどまり何もアップロードしていません。TwitterがURLからリンク先の記事を参照して画像を枠内に表示しているだけです。
【Twitterカードのしくみ】 Twitterには単にブログ記事のURLを入力するだけであり、Twitterカードの画像はブログ記事の画像を直接表示しているに過ぎない。あくまで送信元はブログであり複製も再送信も行われていない。 |
実際に自分のブログ記事の画像を差し替えてみましたが、Twitterカードの画像もリロードするとすぐに差し変わりました。HTMLソースでも単にURLからの表示に見えます。
結論としては、Twitterカードに表示される画像については、引用などの例外規定を使うまでもなく著作権の問題は生じないという事になります。
※通常のツイートでアニメ画像をアップする場合はこの論理は適用されませんのでご注意ください。この場合は画像引用の基準に当てはまるかどうかが問題になります。引用となるかは内容によるので一概に言う事はできません。
同じブログ内のサムネイル画像は問題無いか?
続いてもう一つの質問『同じブログ内の記事紹介のサムネイル画像』について検討してみます。
このブログですとPC画面はサイドバーにスマホでは記事下にありますね。このサムネイル画像に著作権上の問題は生じるでしょうか
これもTwitterカードと同様に考えてみます。
- URLの入力は自動生成だが画像を改めてアップロードしていない。
- 画像はブログの元記事から参照して表示されている。
- サムネイル表示は直接リンクと同様で公衆送信権を侵害していない。
- 元記事の合法性は引用の基準を満たしているので問題にならない。
実際にBloggerで記事の画像を差し替えてみたところ、すぐにサムネイルの画像が変わりました。HTMLソースを確認しても記事を参照して画像リンクを生成しているようです。つまり直接リンクの画像と同じで公衆送信権の問題にはなりません。
【Bloggerサムネイル】 記事内サムネイルは自動生成だが複製は行われず、URL先の記事から直接リンクで表示しているに過ぎない。 |
しかしTwitterカードと違いちょっとモヤモヤする所があるかもしれません。つまり引用目的でアップロードした画像なのに、自己の管理する別の場所に表示される事に問題は無いのか?という事です。
直リンク画像で『不法行為』が問われる事は無いか?
直リンク画像を著作権法で問いにくいとはいえ、民法上の不法行為責任(他人の権利を侵害した場合の賠償責任)を問える余地があります。詳しくは下記の弁護士の解説が参考になります。
外部サイト MERYやWELQ問題を受けて押さえておきたい、画像直リンクと画像無断使用の違法性 - STORIA法律事務所:後半の『画像直リンクでも違法になるケースはある』に解説
不法行為が認められるにはいくつもの要件がありケースバイケースになりますが、不当な利益を得るために故意で悪質な場合ほど認められる可能性は高くなると思われます。
著作権違反を回避するため、他人の著作物から不当な利益を得るため、他人のサーバーに負担をかける・・・などでしょうか。
今回の『ブログ内サムネイル画像』の場合では、自己管理のサーバーで、目的はブログ内の記事のリンク表示、サムネイル利用によって収入を得る事はない、元の記事は合法的な引用・・・などと考えると不法行為が成立する可能性は低いと考えています。
不法行為が問われる『直リンク画像』の悪用
直リンク画像でも『著作権を回避する目的』で他人の権利を侵害して利益を得ていたなら『民法上の不法行為』が成立する余地がある。 |
仮に自己管理のサーバーだったとしても、明らかに著作権を回避する目的で利用し、広告収入を得るために表示していたのなら不法行為が成立する余地があると考えます。(詳しい議論は本論とは離れるので割愛します)
いずれにせよ直リンク方式のサムネイルであれば法的な問題は生じないとするのが結論です。だた、ここでもう一つ問題が・・・直リンク方式ではない記事サムネイル画像も使用されているのです。
関連ページプラグインのMilliardは画像の複製では?
無料で関連記事のサムネイルリストをつくってくれる『Milliard関連ページプラグイン』このブログでも公式のサムネイルとは別枠で導入しています。
このMilliardは記事の画像を変更してもすぐにはサムネイル画像が変更されないのです。という事はMilliardのサーバーに画像が蓄えられてそこから送信している可能性があります。
Milliard関連ページは画像を一度自己のサーバーに取り込んで再送信しているように見える。 |
記事とは別のサーバーからの送信となるとこれまでの話とは変わってしまいます。つまり公衆送信権の侵害となってしまいますが・・・ここでは著作権法47条の6が適用されると考えます。
Milliardは検索事業者と考えれば問題ない
平成21年改正で新設された著作権法47条の6は検索エンジンについての規定が明文化されたものです。これによってGoogleなどの検索サイトによる著作物の複製や送信の合法性が明確化されました。(※それ以前も特に違法とされていたわけではなく一部不明確な部分があったという事です)
外部サイト (条文)第47条の6 送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のための複製等:CRIC (公社)著作権情報センター
この条文は長くてとても読みにくいのですが、下記の解説書を読むと『検索サービス事業者』の定義にはMilliardも十分当てはまるように見えます。
外部サイト 『平成 21 年著作権法改正のポイント』 :情報大航海プロジェクト(経産省主導の官民共同プロジェクト)の一環で作成された事業者向け解説書です。
Milliardは私のブログを『自動で検索して任意の順序で並べて表示する機能』を提供しており定義としてはそれで十分なようです。
検索事業者による著作物の収集や表示は著作権の例外規定なので、Milliardの表示するサムネイル画像も問題ない事になります。(Googleの画像検索と同じという事ですね)
Milliard以外の関連記事サービス、たとえば『zenback』やGoogleアドセンスの『関連コンテンツ』は私は使っていないのでわかりません。
最後に
長くなりましたがどうでしょうか?以上が3つの問題『公式動画の埋め込み』『Twitterカードの画像』『ブログ内のサムネイル』についての法的問題の説明でした。
どの問題も解釈の余地はあると思いますが無理筋な論理ではないと思います。基本的に裁判例や学説に反する事もないと思います。
どれもごく当たり前になされている事で実害を被って問題になっているわけではありません。ただ細い点まで法的にはっきりさせて運営したい人には参考になるかもしれませんね。
個々の事情によって前提が変わりますので参考にする場合も慎重にご検討ください。
私の気づいていない点や見落としている事があれば、ぜひコメント欄やツイッター、はてなブックマークなどでご指摘いただけると嬉しいです。
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