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映画『夜明け告げるルーのうた』感想:こんなに楽しい作品だと思わなかった・・・。

 映画『夜明け告げるルーのうた』2回目を見てきました。初見で見たときの感想は一言『見逃さないでよかった〜!』でしたね。映画館で見てなかったら絶対後悔してただろうなぁ

(※後半からネタバレありのレビューとなりますのでご注意ください。スキップ可)

『夜明け告げるルーのうた』予告映像より画像引用
©2017ルー製作委員会
当ブログの画像引用について

 いい歳した自分が楽しめる作品かな?って心配してたのですが、こんなにおっさんの心に響く作品だなんて想像もしてなかった。でもあの予告では想像できませんよね(笑)

 映画が始まった瞬間・・・えっ、こんな風に始まるの?という驚き。自然と体が揺れてきて、それに続く素晴らしいオープニング!こうくるかぁ・・・ってちょっと感動しちゃいました。

 アニメのOPが好きなので『これはスゴイなぁ』って唸りましたね。本当に美しくて楽しいオープニングで開始10分で完全に心を掴まれました


『夜明け告げるルーのうた』予告映像
TOHO animation 公式配信

 そしてクライマックスはホント良い感じで泣かされちゃって・・・この作品の感動ポイントって世代や人によってかなり変わってくるかもしれないですね。

 吉田玲子さんが共同脚本に入ってるのを知らなかったんだけど、説教臭さや押し付けがましさを感じさせないストーリーで・・・すごく好きだなぁ。

 ストーリーだけじゃなくて音楽の使い方とか、すごい動きとか・・・見所満載の良い作品でした。これは本当に見てよかったです!

子供向けかと敬遠してたけど・・・


 実は、この時期はちょうど忙しくて正直言ってどうしようかなぁ・・・って感じだったんですよね。他にも見たい作品あったし・・・BLAME!とか(笑)

 たまたま仕事帰りにレイトに行けたんだけど、疲れてたのでとりあえず『夜明け告げるルーのうた』を消化しとくか・・・くらいの気分だったんですよ。(失礼)色彩はキレイそうだし動きが良いって評判だったしね。

 予告見る限りはどうしても『ポニョ』を連想しちゃいますよね。ジブリの2番煎じかなって。しかもポニョより一層子供向けっぽく見えるし・・・(笑)

見る前は子供向けの印象しかなかった人魚のルー。
本編見た後だとこの動きが気持ちよくってたまらない。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 まあ自分向けじゃないよなぁ?と思いつつも、疲れてたのでとりあえず気楽に見られる『ルー』を見とくかって感じでした。

 そしたらこれですよ(笑)冒頭からの掴みは最高。疲れてるのに全然眠くならなくて、見終わった後はなんとも心地よい高揚感で映画館を出ることができました。


『音』とストーリーの一体感が素晴らしい


 この作品で特に一番好きなのは?って聞かれれば『音楽の使われかた』ですね。これはホント最高でした。

 冒頭のサンプリングのリズムや、バンド演奏からのOPとか・・・いわゆる劇伴じゃなくて、構成に組み込まれてる感じ。もうこれが最高に気持ち良い!

バンド仲間のユーホ(遊歩)とクニオ(国夫)
単なる劇中のバンド演奏の枠を超えて音楽が構成に食い込んでいる。
『盛り上げるための劇伴』でなく音が脚本の一部になっているようだった。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 『君の名は。』みたいな『予告編的な音楽の使い方』もすっごく好きなんですけどね。あとHoneyWorksの映画もそうかな(あっちはPVっぽい感じですが)

 でも『ルーのうた』はまた違って『脚本に組み込まれた感じ』でしたよね。ミュージカル風ともまた違うんだよね。なんて言えば良いんだろう・・・。

 同じライブでも『ラブライブ!』とかのアイドル作品とも全然ちがってるんだけど、劇中でノリノリになる感じは全然負けてないっていうか。

 とにかくこの不思議な一体感はすっごい快感でした。

※次章よりネタバレありとなります。未見の方は最終章へスキップ

『楽曲と映像のコラボ』が好きな人は見逃せない作品


 テーマソングの『唄うたいのバラッド』の使われかたもよかったですね。もともと劇中でテーマソングが使われるのが大好物なんだけど。

 本作ではメッセージ性というのもあるんだけど、自分としてはいろんなバリエーションが良かった。最初は同じ曲とは気づかなかったけどルーの歌うバージョンなんかすごく良かったなぁ。

 ちなみにルーが最初に歌う曲はなんでしたっけね?ユーホが怒って居なくなった後に歌う曲・・・あの曲すっごく好きだったなぁ。

 あとは、なんと言ってもOPが最高!短いのに凄く充実してて、色彩も美しくて、踊りだしたくなる感じ。『もっと長く〜おわらないで!』って思いました。

 予告編とかオープニングとか『楽曲と映像のコラボ』が好きな人は本当に楽しめる作品だと思います。

たこ婆さんで号泣しちゃった・・・


 それにしても『たこ婆さん』のシーン。もう最高ですね!思いっきり感動しちゃいましたよ。

伏線になってるとは思ったけど・・・まさかたこ婆さんで一番泣くとは。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 この作品って感動ポイントは人それぞれかも。自分の場合は『たこ婆さん』と『お爺ちゃん』のシーンでしたね。ここはハンパなかった・・・。

 序盤でたこ婆さんが『伏線』になってる感じはありましたけどね・・・ルーで泣かせに来るのかなぁと思ったら、まさかこっちでくるかぁ〜って感じ(笑)

 船を操る勇ましいたこ婆さんのシーン。ダイナミックでやたらとカッコ良いシーンから一転、鮮やかに感動シーンに切り替わるのはすごいなぁ。グッと目頭が熱くなりました。

海の男ならぬ海の婆さん。猛烈にカッコイイシーン。
でもまさかこの直後に号泣させられるとは・・・。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 でも、まさか、たこ婆さんが持ってかれるとは予想外で・・・あのシーンきた時は完全に不意打ちで『ぶぁぁぁっ』って感じで涙腺崩壊してしまいましたね。

 ああ、たこ婆さんは帰ってこない・・・文字通り向こうの世界で幸せになったんだって思うと完全にヤラレちゃいました。

気持ち良く繋がる『傘の伏線』


 その後のお爺ちゃんのシーンも感動でしたが、2度目に見た時は人魚のために傘を持っていくのに気付きました。たこ婆さんと違ってお爺ちゃんは人魚を見てピンと来てたんですね。そこでまた感動しちゃました。

全編にわたって傘が重要な伏線になっていて
終わってみると色んなシーンが繋がってくる気持ちの良い構成。
予告映像より ©2017ルー製作委員会

 早い段階から傘が伏線になっててキレイに回収される構成が素晴らしいですよね。ちなみにラストでは街に傘が飾られれたけど、もしかして光るウニの代わりに傘を飾る習慣に変わったのかなぁ・・・なんて思って見てました。

ユーホがかわいく見える不思議


 もちろん評判だった『動き』も素晴らしかったですよね。フラッシュアニメ併用の独特の動きだけど、全然安っぽくなくて面白い動き。最初に踊るルーの動きがすっごく好きで見てるだけで楽しくなってきます

 あと、特徴的なのはキャラクターのシンプルな線ですよね。同級生のユーホ(遊歩)なんか、『あの花』の安城鳴子を簡略化したみたいなキャラで、見る前は全然萌えないしなんだかなぁ・・・って感じでした。

緻密な背景と対照的なキャラクターの描きかた。
シンプルな線で陰影も少ないのに生き生きと立体的にみえた。
PVより ©2017ルー製作委員会

 でも本編見てみると、シンプルな線で陰影もないのに、丸みを帯びた顔が表現されてたり、動きも奥行きを感じるし・・・なによりユーホが可愛く見えてくる不思議(笑)

 逆に背景画はしっかり細部まで描いた水彩画のような表現で、シンプルなキャラと極端な違いが独特の面白さでした。 

ルー役の『谷花音』さんってすごい・・・


 メインキャラの『ルー』も、予告では『なんだかよく分からないキャラだなぁ・・・』と思ってたけど、本編みると可愛く見えてくるんですよねぇ。不思議だなぁ。

 これは動きの良さもあるけど、声優の『谷花音』さんの力も大きいですよね。彼女まだ13歳でしょ?本当にうまいなぁ・・・。

ルーの素晴らしさは『動きの良さ』もさることながら
谷花音さんの演技による所も大きいと思う
PVより ©2017ルー製作委員会

 『君の名は。』四葉の役だったのでうまいのは知ってましたけどね。とはいえ子役だからって子供の人魚の役ってベタすぎないか・・・なんて思ってたけど本当にピッタリでした。

 四葉の時も思ったんだけど、リアルな『子供っぽさ』と声優さんの『プロっぽさ』いい意味で両立してる感じなんですよね。こんなファンタジーキャラでもその才能を発揮しててベストなキャスティングでした。

単なるファンタジー・成長物語に留まらないストーリー


 見る前はありふれた成長物語というか・・・ちょっと説教くさい子供向けの話かな?って思ってましたが、いい意味で裏切られましたね。

 産業に行き詰まった港町の対立、東京への若者の流出、地元の魅力を再発見、愛着と回帰・・・・ファンタジー作品のようで『時代の空気』を無理なく織り込んでました。

 特に津波を連想させるシーンを大きく取り上げるのは勇気のいる事だったと思います。『君の名は。』も3.11以降の作品らしさがあったけど、それよりもずっと直接的な表現だったしね。(ある程度時間のたった)今だからこそチャレンジできた表現かも。

 でも、こういうのを説教臭くならない感じで表現できてるのがすごいなぁ。自然に織り込んでるですよね。この辺はやっぱり吉田玲子さんの手腕もあるんじゃないかなぁって思うんですよね。

大人にこそ響くストーリーかも


 Twitter見てたら『主人公のカイに感情移入できない』って意見も見たけど、この辺は年代によって随分印象がちがうかも。二十歳くらいだとカイに感情移入しようとしちゃうのかな?

 自分は離れた視点で見られるせいか、むしろあのアンバランスな感じが若さのリアリティを感じたりして。

感情の変化が激しい主人公のカイ。
若くして複雑な事情も抱えている彼の余裕のなさからくるものだと思う
oricon 公式配信『歌うたいのバラッド』〜より
 ©2017ルー製作委員会

 40過ぎのおっさんにも、いやおっさんだからこそ感動しちゃうのかも・・・。そういう意味では、良い歳した大人にこそオススメしたいかな。(もちろん子供も楽しめるでしょうけど)

 予告みて『自分が見る作品じゃない』と勘違いしちゃった人もいるかもしれない。あるいは映画『夜は短し歩けよ乙女』をみて、ちょっと難解な作品を作る人と勘違いしちゃった人もいたかも。

 でもこの作品は、どの年代でもきっとそれぞれ感じるところのある作品で、特に自分のような年代にはきっとガツンときてしまう作品。

 斬新なのに踊りだしたくなるような楽しさで、感動してスッ・・・と終わる、切なくとも爽やかな後味

 これは本当に食わず嫌いしないで良かった・・・と思う素敵な作品でした。

追伸:NHK『クローズアップ現代+』でホワイトな職場環境のアニメ製作会社として(ポリゴンピクチュアズと共に)紹介されていましたね。フラッシュアニメの活用方法も紹介されていました。やっぱり観客としても現場のスタッフが元気だと見ていて気持ち良いですよね。

映画『夜明け告げるルーのうた』公式サイト

監督:湯浅政明
脚本:吉田玲子/湯浅政明
音楽:村松崇継
キャラクターデザイン・作画監督:伊東伸/美術監督:大野広司
フラッシュアニメーション:アベル・ゴンゴラ/ホアンマヌエル・ラグナ
アニメーション制作:サイエンスSARU
配給:東宝映像事業部

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