Pages

.

矢澤にこの事〜ラブライブ! 感想


『ラブライブ!』 あらすじ 
”廃校の危機にある東京の女子高「音ノ木坂学院」
入学希望者を増やすため2年生の高坂穂乃果が呼びかけてスクールアイドルを結成する。反対する人もいたが周囲を巻き込み9人でμ's(ミューズ)を結成。スクールアイドルの全国イベント「ラブライブ!」を目指す・・・”

かなしいピエロ


 好きなキャラは?と聞かれれば花陽(はなよ)ちゃんや海未(うみ)ちゃんを挙げるわけだけど、応援したいキャラは?といえば、ダントツで『矢澤にこ』だろう。矢澤にこの存在は本作品に大いに深みを与えている。彼女がいなければ『ラブライブ!』という作品への印象は全く変わっていたはずだ。

 当初は変わり者のお笑いキャラのような扱いだけれど、実は穂乃果より早くアイドル研究部を立ち上げ、アイドルへの知識もモチベーションも高く持っていた。しかし空回りして仲間は去る。そして今は忘れられたようなアイドル研究部を一人ぼっちで守ってきた事が明かされる。

 彼女は穂乃果達3人のファーストライブをどんな思いで見ただろう。いらだちと羨望の入り交じった複雑な感情だったに違いない。自分の方がもっともっと思い入れが強いのに・・・しかし彼女達は大成功とは言えないもののファーストライブをやり遂げた。

 挫折した彼女からみれば、そんな甘い物じゃないと言いたくもなるのだろう。だからこその嫌がらせ。コメディーとして描かれているから見る方は重くはないけれど・・・見返すと悲しいシーンである。

 さらに登場人物のほとんどは、悩みはありながらも結局はお嬢様であり、どこか浮世離れしている。そんな中で矢澤にこだけが両親が多忙で4人兄弟の長女として家事をこなし生活感があふれている。
 それを覆い隠すかのような過剰なまでのアイドルとしての演技・・・そして幼い妹達への見栄をはったウソ・・・・現実との乖離(かいり)が大きいほどその悲しさも大きい。浮世離れした美しい青春物語のなかで唯一の異物であり、かなしみを内に秘めた道化役。それが矢澤にこだ。

だから共感できる


 だがミューズのメンバーにおいて、最も直接的に夢を実現できたのは、主人公である穂乃果を差し置いて矢澤にこだろう。他のメンバーにとってアイドルとは、夢を実現するための『媒体』なのに対して、彼女にとってはアイドルが夢そのものであり目標なのだ。

 劇中においても彼女の悲しいほどの必死な姿を何度も目にすることができる。そして彼女は良く理解している。自分の限界、自分に無い物をもっているメンバー達、そして年下である穂乃果のカリスマ性が無くてはミューズが成り立たないこと・・・そしてそれが自分には無い事も・・・。だから奇跡のように舞い降りてきた1本の蜘蛛の糸に必死でしがみつき悲しいほどに執着する。

 そんな奇跡の出会いによって、夢のステージに立つ事ができた彼女の感慨は想像に余りあるだろう。だからこそ、それを観る私たち〜挫折ばかりの冴えない中年〜にとって、本当の意味で唯一共感できて成功を喜べるのは矢澤にこだけなのだ。13話ラストステージの『START:DASH!!』で踊る彼女の笑顔が最高に幸せそうで本当によかったなと思えるのだ。


ラブライブ!TVアニメ2期番宣PV Lantis Channel(公式)

食わず嫌いを反省


 とまあ、少し大仰に書きましたが、その辺が単に萌えキャラを楽しむだけでない作品性の高さなんでしょうかね。

 正直言って本作は視聴に心理的抵抗がありました。実際かなり偏見もってましたからね。さすがに四十過ぎのおじさんが女子高生のアイドルアニメってのはね、いかがなものかなと。まして奥さんがいるとね。全部見るのにかなり時間がかかってしまいましたよ。
 でもまあ、有名みたいだしと、再放送を録画して気楽に見始めましたが、1期3話でぐっと引き込まれましたね。特に1期は意外性のある構成に驚かされました。さすが評判になっただけの事はありますね。ラストへの展開はまるで想像していなかったので驚きました。いやあこれは面白い。

 前段でにこちゃんの事を長々と書いていてなんですが、ライブシーン以外で一番好きなシーンは実は8話後半。生徒会長の絵里が感情を爆発させるシーンだったりします。いつも冷静で頼りになる上級生がポッキリ折れて感情を露にする・・・って、ちょっと『まどか☆マギカ』を連想してしまいました。

 上げては落とすような非情な展開も『まどか☆マギカ』を連想させますね。あんなに酷くはないけど。自分はこういう展開が好みなのだろうか・・・。でも全体として厳しい話になりすぎず、説教臭くない所がいいですね。

 青春スポ根ドラマのように見せかけて実際はそういう要素はかなり省略されてます。むしろ苦労なんてほとんどしていないというか、かなりのご都合主義。でもその辺が友情というテーマに焦点をしぼっていて、素早い感情移入を助けているのかな。

 1期13話しかないにもかかわらず、9人ものキャラクターにしっかり感情移入できるようになっているのは驚きでした。この辺は構成演出の妙というか、1期だけでも充分に感情移入した状態でライブシーンを楽しむ事が出来るように配慮されています。それが無い状態でライブを見ても充分に楽しめないのは本物のアイドルと同じですね(多分)

 しかし恋愛より友情というのがいかにも現代的というか、男性視聴者向けの演出も多分にあるとは思うのですが、社会学者の宮台真司氏が主張するように若者の恋愛からの退却が進んでいるということなのかな、と思ったりして。


ラブライブ!START:DASH!! TVCM Lantis Channel(公式)

意欲的なライブシーンに驚き


 でも驚いたのはストーリーだけではありません。意欲的な3DCG併用のライブシーンには感心しました。特に『START:DASH!!』は楽曲がすばらしいだけでなく、現実には不可能なカメラワークや汗を利用した振付け表現などアニメならではの手法が効果的で素晴らしかったですね。昔は3Dで萌えなんてあり得ないと思っていましたが、時代はここまで来たんですねぇ(感動)

 1期13話のラストライブは特に素晴らしいですね。80インチスクリーンに投影して繰り返し見てしまいました。初めは違和感のあった3D部分も回を重ねるごとにどんどん良くなっていくのがわかります。大画面にも耐えるすばらしい作品でした。
 2期は比較的ストレートな展開でしたが、メンバーの内面をさらに掘り下げて作品に深みを与えています。3年生の卒業までの青春ストーリーの王道のようで良かったですね。

 2015年に完全新作の劇場版が公開される事が発表されました。一体どんな内容になるのか想像もつきませんが、ライブシーンが高精細な劇場スリーンで見られるだけでも楽しみですね。
 しかし、2期のTOKYO MXの画質が低くて残念。80インチで投影するとライブシーンがノイズだらけでがっかりですね。BD買ってくださいって事かもしれませんが、だれでも買える訳じゃないよね。


ラブライブ!(1期 全13話 2013年)
ラブライブ!(2期 全13話 2014年)
原案:公野櫻子(オリジナル作品) 監督:京極尚彦 シリーズ構成:花田十輝
アニメーション制作:サンライズ

他の『アニメ』の記事を読む
『スピーカー』『備忘録・Mac・その他』『生活』




No comments:

Post a Comment