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劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」感想(短評):選択と選択を結んだ未来

 アニメ版の『君の膵臓をたべたい』を映画館で見てきました。

 主人公のツンデレ?的展開に座席でモニョモニョしてしまいました(笑)こんな男いるかよ〜と思いつつも、こんな男だから選ばれたんだよなぁ・・・とも思うわけで。でも単にラノベ的モテ展開を楽しむ作品じゃないですね。
ある意味ラノベ主人公っぽいけど
この作品ではこの性格にすごく意味があるのが面白い
© 住野よる/双葉社 © 君の膵臓をたべたい アニメフィルムパートナーズ
本予告より画像引用(当ブログの画像引用について

 この作品って『死という結末』をあらかじめ明示した上でどう展開するのか?が楽しみだったのですが、そういう意味ではなるほどなぁという構成でしたね。面白いと言っては語弊がありますが。

 でも冒頭のあの入り方はうまいですよね。さすがにあの場面から入るとは思わなくてちょっとビックリしました。後半どう展開させるんだろう・・・って。

 割とお涙頂戴な作品かなぁ・・・と斜に構えてるところもあったのですが、やっぱり涙は出ましたね。でもそれ以上に『君と出会うために選択した』の意味とか『星の王子さま』のモチーフにすごく興味を惹かれました。

劇場アニメ「君の膵臓をたべたい」本予告(公式)

※実写版・原作小説は未見での解釈です。
※核心のネタバレはないレビューですが未見の方はご注意ください


『君と出会う、ただそれだけのために、選択して生きてきた』


 自分はこの言葉が結構響きましたね。

 カッコつけすぎと違和感を感じる人もいるかもしれないけど、この言葉って『未来が過去を規定する』って考えを具体的に言ってる気がするんですよね。ちょうど最近みた『ミライの未来』でも同じテーマを感じていました。
 自分は『未来が過去を変える』という考え方が好きなんだけど、ひいじいちゃんが特攻で足を負傷したのも、その時点では不幸かもしれないけど、その後に不自由がキッカケで幸せになって『過去の意味』が変化したわけですよね。  『未来のミライ 感想:これは細田守の『夢十夜』なんだ』 - アニメとスピーカーと

 選択をした『過去のそのとき』には、二人の出会いを意識していたわけじゃない。当然です。予知能力があるわけじゃないですから。

 でも現在から過去を見ると、これまでの選択は『君と出会うため』に選択したと意味づけることができる。
何気ない選択が未来から見たときに意味が生まれる
© 住野よる/双葉社 © 君の膵臓をたべたい アニメフィルムパートナーズ

 これと似てるんだけどAppleのスティーブジョブズの有名な講演『Connecting The Dots』も連想するんですよね。(全文は日経記事より
将来を見据えて、点(出来事)と点(出来事)を結びつけることはできません。後で振り返って見たときにしか、点と点を結びつけることはできないのです。(You can’t connect the dots looking forward; you can only connect them looking backwards.) - 『スティーブ・ジョブズが信じたもの』- ドイツ語翻訳家 TOMOKO OKAMOTO より

 二人にとっても振り返ってみたとき、それぞれの選択が『君と出会うため』の線として結びついている。そういう意味だと受け取りました。

『星の王子さま』について


 ラストの『星の王子さま』のシーン。実は自分も読んだことなかったんですよね。主人公の事を全く笑えないですが。そういう人多そうですよね。

 何度かトライした気がするし、NHKの『100分で名著でも見たのですが、なんかぼんやりした記憶で・・・ちょっと掴みどころのない話ですよね。
一方的に主人公に近づく桜良の行動
星の王子さまのモチーフと重なって見える
© 住野よる/双葉社 © 君の膵臓をたべたい アニメフィルムパートナーズ

 桜良が小さな星で話すモノローグ。あれは『星の王子さま』をモチーフにしているのは明らかでしたが、いまいちこの作品との関わりがわからなかったんです。

 今回Wikipediaのあらすじを見て意味がようやくわかりました。物語後半のキツネと王子のエピソードが、この『キミスイ』のストーリーと重なるんですね。
別れの悲しさを前に「相手を悲しくさせるのなら、仲良くなんかならなければ良かった」と思う王子に、「黄色く色づく麦畑を見て、王子の美しい金髪を思い出せるなら、仲良くなった事は決して無駄なこと、悪い事ではなかった」とキツネは答える。別れ際、王子は「大切なものは、目に見えない」という「秘密」をキツネから教えられる。( 星の王子さま wikipedia  より)

 『星の王子さま』のテーマの一つに『別れの悲しみが苦しいなら出会わないほうが良かったのではないか?』というのがあるんですね。ある意味その回答になる物語ってことなんだなぁ。

 先日見た『フリクリ オルタナ』でも終わりのある人生を生きる意味というのを考えさせられたけど、思いがけず関連するテーマだなぁと思いました。

最後に


 実写版は未見なのですが、アニメ版は原作小説寄りの内容だそうですね。アニメでは『二人の対話』が中心の作品なので、小説版だと読みやすいストーリーかなという気もしました。

 そういう意味では、アレンジがあるらしい実写映画も見てみたいですね。実写版は未見なのですが、この作品は両方楽しめるように作られてるんだろうなぁ・・・って予感がしました。我慢せずに実写を先に見ても良かったかな(笑)

 実写版はあの女優さんの力がすごそうですよね。予告を観てて行きたかったんだけど、見逃しちゃって・・・ちょっとやせ我慢してました。今度レンタルで見てみたいですね。 

 それにしても、最近みた『ミライの未来』や『フリクリ オルタナ』と重なるテーマを感じたのはちょっと不思議な感じです。時代の空気がそれを求めているってことなのかな。

監督・脚本:牛嶋新一郎
原作:住野よる
制作:スタジオヴォルン

劇場アニメ『君の膵臓をたべたい』公式サイト
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