ものすごく分かりやすくて、ややもすると陳腐になりそうなストーリーを『演出の力』でとても後味のよい作品に仕上げていました。
小さな街角のお話だけど終わってみれば大作を観たなぁ・・って思わせる(笑)最後は自然と涙が流れて気持ち良くスクリーンを後にできる映画でした。
映画『きみの声をとどけたい』本予告
東北新社 映画チャンネル(公式配信)
※以下ストーリー上の核心に迫るネタバレはないレビューですが未見の方はご注意ください。
劇中音楽の演出がすごく良い!
『きみの声をとどけたい』で驚いたのは音楽の演出ですね。楽曲を積極的に劇中で使いセリフと歌詞を被せてくる演出、アレ、すっごく好きなんですよね。
タイトル前のまるでオープニングのような構成。クレジットが出ないので不思議な感じですがあそこ好きだったなぁ。一気に気持ちが盛り上がりました。
その後も歌詞のないバージョン?(良くわからなくて、違ってたらごめんなさい)を劇中で使ったりする所も良かったな。もちろん劇中でのライブもね。ベタなんだけど、あそこまで感動させるのってすごいなぁ・・・ちょっとビックリしました。
劇中では様々な形で楽曲が使われる。音楽による演出は際立っていた。 映画『きみの声をとどけたい』本予告より画像引用 (当ブログの画像引用について) (C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会 |
ストレートで奇をてらう所のない作品ですが、楽曲の使い方だけはちょっと普通の作品とは違う演出。ある意味今風なんでしょうけど。でも、すごくマイルドな使い方なので多くの人に受け入れられる演出だと思います。
自分はこの音楽の使い方がとても好きでした。
ラブコメ要素のないストレートな青春物語
ストーリーはラブストーリー要素はほとんどないという純粋な青春作品。まあ、予告編そのままって捉えて良いと思います。正直、鑑賞前は『文科省推薦』っぽい雰囲気でなんだかなぁ・・・って印象でした(笑)
病気のお母さん、ラジオ、言霊、商店街・・・など 見る前は説教くさい教育作品かな?って印象だった。 (C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会 |
それがここまで見せてくれる作品になってるんだから・・・大したもんですよね。ビックリしました。
予告では『言霊』とか『ラジオ』とかファンタジー的なやつかな?って思いましたが、ファンタジーとかスピリチュアルな作品というより、基本的には友情と青春の話ですね。
斜に構えた自分でも楽しくなっちゃう不思議な感覚
自分はひねくれ者なので、こういうストレートな作品はつい説教くさく感じちゃって。まあ、敬遠しちゃうんですよね、正直なところ。とりあえず見てみるか・・・くらいの気分でしたが、冒頭のノリの良い演出から上手く見せてくれるんですよね。
『へぇ〜結構面白そうじゃん』って気分にさせて、自分の斜に構えた気持ちをほぐしてくれます。
主人公の『行合 なぎさ』もちょっと現実離れしたような良い子で、普通だと『こんな人いるわけないじゃん』なんて思っちゃうんだけど、不思議とそういう覚めた気分にさせられないんですよね。
主人公の行合 なぎさ ありえない行動を取っても不思議と許せてしまう (C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会 |
なぎさ役の片平美那さんの、ちょっとクセのある演技がすごくハマっていたせいかもしれません。
声の演技もかなり良かった
この作品の主要キャラの声優は、三森すずこさんを除くと、すべて新人声優ユニットのNOW ON AIRのメンバーだそうですね。全然知らなかったのですが。
右端の『紫音』以外はユニットの新人声優が演技 真ん中の乙葉は独特のキャラデザインで面白い (C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会 |
そう聞くと企画ありきって感じで『大丈夫なの?』って思いましたが、さすが選抜されただけあってどの人も上手でしたね。
特に主人公のなぎさに片平美那さんを充てたのは良い配役だなぁと感心しました。独特の揺れや妙にリアルな感じが面白いです。まあ、大泣きするシーンはいかにもアニメ的でどうかと思いましたが。
あとアーティストの乙葉役の鈴木陽斗実さんの演技も良かったですね。落ち着いた声と演技で新人だとは思わなかったです。というか、役では大学生設定だと思っちゃいました。他のキャラと同じ17歳の設定だったんですね(笑)
映画「きみの声をとどけたい」は8/25(金)全国ロードショーです🎉私は琵琶小路乙葉を演じさせていただきました!音楽少女な乙葉ちんをよろしくお願いします🎼— 鈴木陽斗実(NOW ON AIR) (@NOWONAIR_hito) 2017年8月23日
劇中ライブでも使われる『Wishes Come True』を歌う乙葉役の鈴木陽斗実さん。
初日はアニメファンばかりだったけど
鑑賞初日は金曜日だった事もあって、観客はほとんど男性のアニメファンって感じでした。でもこの作品って、もっと一般の10代、20代の人たちに受け入れられる作品ですよね。
キャラクターデザインも独特だけど、萌え度を下げてかなり万人向けになってるし。(メガネっ子の雫だけはかなり萌えますが)リアルな女子高生の気持ちはわからないけど、多少斜に構えたような男子高校生にも普通に楽しめるんじゃないかなぁ。
萌え度の低いキャラクターデザイン でも眼鏡キャラの雫(左端)は良い感じですね! 静止画でみると平面的だけど結構よく動いてます。 (C)2017「きみの声をとどけたい」製作委員会 |
たまにしか映画を見ない人も、この作品はすごく良い気分で映画館を後にできるだろうなと思うんですよね。アニメファン以外の一般の若い人たちも見に来るといいなぁ。
とはいえ、HoneyWorksの『告白実行委員会』シリーズみたいに中高生をすごく誘引する作品じゃないのでツラいですね。泣ける恋愛話もカッコ良いキャラも出てこないしね。(男性キャラは人気声優さんで固めてあるとけどね)
上映後にエネルギーをもらえた作品
新人声優ユニットのNOW ON AIRのメンバーが声優をやって、楽曲もタイアップなんて聞くと、企画ありきのユニット活動かよ・・・なんて(自分みたいに)萎える人もいるかもしれません。
NOW ON AIR セカンドシングル「キボウノカケラ」Music Video
Lantis Channel (公式配信)
後味の良さはEDに使われたこの曲の影響が大きいと思う。
自分も先に知ってたら行くの迷ったかも(笑)『難解でひねった作品』や『シリアス展開』が大好きなので、大丈夫かな?と心配しましたが、そんな自分にも楽しめるように工夫された演出に感心しました。
隣のおじさんも思いっきり泣いていましたが、自分もラストは涙が溢れました。さすがに泣くと思わなかったので我ながらびっくりしました(笑)
こういう涙は全然消耗しないし、むしろエネルギーをもらえる感じですね。もちろん消耗しちゃうような作品も大好きですけどね。こういうのもタマには良いですよね。
どのくらい一般の人まで観客が広がるかわかりませんが『なんだかマジメそうな作品』なんて敬遠されなきゃいいなぁ・・・っていらぬ心配をしてしまう作品でした。
監督:伊藤尚往/脚本:石川学
キャラクターデザイン:青木俊直
アニメーションキャラクターデザイン:高野綾
色彩設定:堀川佳典/音楽:松田彬人
制作:東北新社・マッドハウス
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