もう『泣ける』とか・・・そんな単純な言葉では表現できないですよ。そりゃあ、声出して泣きましたけどね。でもね、新海監督がやってくれたんですよ・・・新海作品の良さを全く失わずに、これほどのエンターテイメント作品を作りあげたことへの感動ですよ!映画『君の名は。』を初日に見た感想です。
自分の大切にしてるアニメ作品を3つ挙げろと言われたら迷わず『秒速5センチメートル』を入れてしまう自分にとって、新海誠監督がメジャーになっていく姿は嬉しくもある反面、不安もあったんですよね。
新海監督の作品って作家性がかなり強いじゃないですか。熱狂的に支持するファンがいる反面、結構人を選ぶというか・・・。今回はこれまでにない大規模公開という事で、万人向けのメジャーな作品に挑戦する訳ですが『独特の新海カラー』を薄めてしまうんじゃないだろうか・・・なんて心配になっちゃうわけですよね。
まあ、単なる1ファンが偉そうに言うのもどうかと思いますが、そんな期待と不安の中、先行発表された小説『君の名は。』も、あえて未読のまっさらな状態で劇場へ行ってきたのです。
冒頭の美しい彗星のシーン・・・今考えるとすごいシーンなんだけど綺麗でしたね。新海さんらしい輝きのある映像!でもビックリしたのがその後のオープニング。
最近の劇場版アニメはOPは省略することが多いから正直驚きました。OPを入れるとTVアニメっぽくなるので避けるのでしょうけど、音楽と合わせる事の得意な新海作品ではやっぱりオープニングアニメがあるのは嬉しい驚きでした。
チラシの文字まで緻密に書き込まれている映像や、カットの一つ一つが絵になる背景は、新海作品らしく全く期待を裏切らない美しさでしたね。
序盤は予告編通りのテンポの良い進行で、田中将賀さんのキャラクターデザインは本当に馴染みやすくグッとメジャー感を感じます。
そして序盤も終わりにさしかかり、この後どう展開していくのか・・・?と思っていた30分過ぎ。まさかのミュージックビデオ的な場面の展開!新海作品の予告編が超大好物な自分としては、この楽曲とセリフが重なる演出が本当に大好きなんです。
もうこの時点で『やってくれた・・・新海さん・・・やってくれた!』って感激で目頭が熱くなってきました。製作陣も分かってくれてるんだ、この良さを、新海さんの予告編の素晴らしさを分かってくれてるんだ!って本当に嬉しくなって、この作品はもう間違いない・・・傑作に違いない・・・と確信した瞬間でした。
※以下ネタバレとなりますのでご注意ください。
そして後半。あの、現実が明らかになるシーン。糸守町の廃墟を前に劇場の空気が一変するような本当に鮮やかな場面の転換。ゾクゾクっとした感動で・・・ネタバレなしで見たので本当に圧倒されました。
そしてラストはどうまとめてくるのか・・・?新海監督ならどんなエンディングでもあり得るだけに本当に気が抜けない展開でしたね。『頼む・・・今回ばかりはキツいのはちょっと・・・』と祈るような思いでした(笑)
クライマックスを分散するように感動ポイントを仕込み、気持ちも分散するかと思いきや・・・実は階段を上るように着実に感情を揺さぶってきます。今考えるとホントうまいよねぇ。特にエンディングでの楽曲の使い方が最高!イントロのタイミングから綿密に計算されていて見事に涙腺を操ってきます。
だからラストの電車で目が合うシーンの前くらいから、もうすでに感極まってしまい(笑)相当やばい感じに。『これで再会できなかったらこの涙をどうしてくれよう!』と思っていたところで、一旦ちょっと引いて『えっ?』と思わせてからの一声!
今度は瀧くんが勇気を出す番だよと言わんばかりの演出!これもう本当にタメに溜めに溜めきった末での感動で・・・新海さんサービス良すぎ(笑)
あまりに涙が出すぎて何度も嗚咽を漏らしてしまったじゃないですかぁ!『はっはぅぅ・・・』っていいトシして恥ずかしいわい!(周りの人も泣いてたけどね)正直その前後のシーンは記憶が定かでは無くなっちゃて・・・再度見て確認するしかないね。
ホント、エンディングの前半は涙ですぎてほとんど目が開けられませんでしたよ。黒バックのシンプルなEDであそこまで泣かされるなんて・・・ラストシーンの余韻を思い返すだけで止まらなくなるんですよね。でも本当に気持ち良かった!
全く期待を裏切らず全力で期待に応えてくれる、これが新海さんの作るメジャー作品なのか・・・と圧倒されました。そうしたら鑑賞後にみたインタビュー記事をよんで笑ってしまうと同時に納得してしまいました。
ああ、これが新海さんのサービスなんだ・・・これまでの作品以上に、観客を楽しませるために全力でサービスしてくれたんだなぁ。だったら観客である自分は小賢しいこと考えずに全力で楽しむのが正しいんだよなぁって安心しました。
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ストレートで理解しやすいとはいえ、考察したくなるところもたくさんある作品でしたね。(小説やパンフは未読なのでそちらには書いてあるのかもしれないけど、違ってたらゴメンなさい)
自分が一番に気になったのは、どうして三葉の入れ替わり相手が瀧くんだったのか?という事でした。
あれは一葉おばあちゃんが言っていた昔話の、大火のキッカケとなったまゆごろう(繭五郎?)という人・・・きっとあの時に火を出したという彼が瀧くんとなんらかの繋がりがある人なんじゃないかな?
前回は大火を出す事で村人を救ったものの出火の責任を取って村を出た。それで今回はテッシーにその役割を担わせて・・・なんてどうでしょう(笑)
だとしたら、三葉のお母さんやおばあちゃんの入れ替わり先は、瀧くんのお父さんやおじいちゃんだったのかな・・・その当時は入れ替わったとしても天災は起きないんだから意味のない不思議現象なんだけど。
でも宮水家は次の天災に備えて、その入れ替わり現象を代々続けていたのかもしれませんね。一葉おばあちゃんが言ったように、その『意味は失われて』も組紐のように繋いでいったものなのかもしれないなぁ・・・その失われる前の記録も知りたいですね。
楽曲の『前前前世』じゃないけど、きっと世代を超えて共鳴し合っているんだろうなと。そういう物語大好きだなぁ・・・そういえば、町長になったお父さんも、もしかしたらこの天災に備えて導かれたのかもしれませんね。自分で選んでいるようでいて、結局運命だったりするんですよね。
今回、役者中心の声優でしたけど違和感はなくてすごくいい演技でしたね。役者さんの声優だと、どうしても素の印象が強くなったりしますが、声を聞いて顔が浮かんだのは市原悦子さんくらいで、長澤まさみさんもいい感じで溶け込んでいましたね。
瀧くん役の神木隆之介くんは安心できるというか本当うまいですよね。この作品の雰囲気というか新海さんの作風に語り口があってる気がしたな。
ヒロインの三葉役の上白石萌音さんは18歳なんだってね。役者っぽさというか良い意味で声優的じゃない感じが良かったと思う。あと、三葉の同級生テッシーこと『勅使瓦克彦』は、モデル出身の成田凌くんが意外と言っては何だけど、すごくキャラにあった演技でよかったですね。
有名声優の悠木碧さんは、逆に目立たずすごく自然に役に溶け込んでいて、やっぱすごいやぁって感心してしまった。
もう一人注目だったのは、妹の『四葉』の役者さん。本物の子役(12歳)の谷花音さんがやってると知ってビックリ。すっごい力のある子役キャラで、ちょっと癖のある声なので絶対声優さんかと思ったよ!まじか!
今回の作品が発表されて、東映の拡大上映とかどんどんスケールの大きい話になってて『ヒエェ〜大丈夫なの?』って1ファンに過ぎない自分が心配になっちゃうくらいで・・・大勢の人に期待されるという重圧というか辛さって相当なものじゃないかなぁと思ってました。
凡庸な自分の頭では、ほかにどんなネタがあるのかまるで思いつかないし(笑)、予告編を見る限りは、男女入れ替わりもので・・・なんか一見ありふれた話のようで。マンネリ化とかしちゃってるのかな?って。
でも実際に見てみれば、マンネリとは逆に一貫して繰り返しテーマを追求したうえで、セカイ系と現実のラブストーリーという、これまでの作品の枠組み自体を融合させて、映像もストーリーも、最新の日本アニメとしてふさわしい作品に仕上がっていました。
しかも『新海作品らしさ』はしっかり保ったままでこれを成し遂げたんだから本当にすごいですね。『人と人との心のつながり』という普遍的なテーマ。
自分が大学生だった頃、羨望の眼差しで見た初期作『ほしのこえ』から連綿とそのテーマを紡ぎ続ける新海作品。あの時・・・14年後にこんなすごい作品を見せられる事になるなんて想像もしてなかったけど、本当に素晴らしかったです!ありがとうと感謝したくなる作品でした。
<追記>新海監督への気持ちがすっごい共感できたブログです。ホント泣かせてくれるくれる感想でした。
2回目鑑賞後の追記
ようやく2度目を見る事ができました。夏休み明けでもすごいお客の入りで話題作ってのを実感しますね。今回は多少冷静に見られましたが、改めて楽曲を使うタイミングが上手いなぁ・・・と。セリフを被せてくる予告編的な演出は本当に好きで堪能しました。
2度目でまず気づいたのは三葉の古典の先生!声を聞いたときに「あれ?もしや!』と思ったけど、EDのクレジットで『ゆきちゃん先生:花澤香菜』って出てませんでした?『言の葉の庭』のセルフオマージュかと思いきや『本人出演』って事かよ!って。でもクレジット見た時すっごい暖かい気分になったんですよね。
あ、でも、もしかして災害後に東京に戻ってこちらも再会?なんて事になったりして・・・妄想が膨らみますねぇ(笑)
それにしても、図らずも今年の話題作である『シン・ゴジラ』と『君の名は。』はどちらも震災をモチーフにしているんですよね。上で紹介したpencroftさんのブログにあるように『こうあってほしい』という日本人の思いが作品に投影されているとも言えるのかもしれません。
特に『君の名は。』は東日本大震災のみならず、それに隠れてしまいがちな長野の栄村の震災や、地震以外の地方の災害なんかも連想してしまったんですよね。
ちなみに東氏も鑑賞後に「100点に近い』との評価をしていて正直驚きました。以外と厳しい評価するかなぁと思ってたので。その上での、次のツイートは結構考えさせられますね。
SF作家の山本弘氏のツイートなどで話題になった彗星軌道問題。初見の時は気づかなかったのですが、劇中のニュース映像に間違った軌道図が表示されていたんですね。自分もTwitterのフォロワーさんに教えていただきました(感謝です)。
冒頭の1回目の映像では、太陽の向こう側を回る正しい軌道図なのに、後半の2回(たしか当日の朝と夜?)は太陽の手前を回る誤った軌道図になっていましたね。確かにこれはちょっとありえない軌道・・・。
まあ、ストーリー展開には影響ない『単純ミス』なのでBD版の発売時には修正されているだろうという事で落ち着いているようです。
実際、最初の軌道図では1200年という長周期彗星らしく角度の広い双曲線軌道っぽくなっていて『意外とちゃんと検証してあったのでは?』と思わせるところもあります。(参考:国立博物館 宇宙の質問箱)
何かの拍子に間違った伝達があってミスが見逃されちゃったのかもしれませんね。とはいえ、ミスと言うだけではつまらないので、とりあえずBDで修正されるまでの仮設定として『後半2回のニュースは同じ放送局で、番組スタッフの勘違い誤った軌道図を放送してしまった・・・』というのはどうでしょう?
『視聴者からの苦情で後日訂正した』というサイドストーリーにしておけば映画鑑賞中も気にならないで済むかも・・・(笑)少々無理がありますが。
いずれにせよ作品の評価には特に影響はないですね。BD版が楽しみになるくらいです(笑)
『君の名は。』公式サイト
http://www.kiminona.com/index.html
reade more...
新海作品が広く一般に評価された事に感動してしまった 「君の名は。」予告2より画像引用(東宝MOVIEチャンネル) (当ブログの画像引用について) (C)2016「君の名は。」製作委員会 |
※以下ネタバレありのレビュー&考察となりますのでご了承ください。
関 連 IMAX版を見に行った時の感想も書きました。
『君の名は。』IMAX版の感想:空気感を感じる映像に2Dアニメの潜在力を体験できた - アニメとスピーカーと‥
期待と不安を持って劇場へ
自分の大切にしてるアニメ作品を3つ挙げろと言われたら迷わず『秒速5センチメートル』を入れてしまう自分にとって、新海誠監督がメジャーになっていく姿は嬉しくもある反面、不安もあったんですよね。
新海監督の作品って作家性がかなり強いじゃないですか。熱狂的に支持するファンがいる反面、結構人を選ぶというか・・・。今回はこれまでにない大規模公開という事で、万人向けのメジャーな作品に挑戦する訳ですが『独特の新海カラー』を薄めてしまうんじゃないだろうか・・・なんて心配になっちゃうわけですよね。
まあ、単なる1ファンが偉そうに言うのもどうかと思いますが、そんな期待と不安の中、先行発表された小説『君の名は。』も、あえて未読のまっさらな状態で劇場へ行ってきたのです。
序盤の終わりに傑作を確信!
冒頭の美しい彗星のシーン・・・今考えるとすごいシーンなんだけど綺麗でしたね。新海さんらしい輝きのある映像!でもビックリしたのがその後のオープニング。
最近の劇場版アニメはOPは省略することが多いから正直驚きました。OPを入れるとTVアニメっぽくなるので避けるのでしょうけど、音楽と合わせる事の得意な新海作品ではやっぱりオープニングアニメがあるのは嬉しい驚きでした。
田中将賀さんのキャラクターデザインは素晴らしいの一言 メジャー作品にふさわしい洗練されたデザイン (C)2016「君の名は。」製作委員会 |
チラシの文字まで緻密に書き込まれている映像や、カットの一つ一つが絵になる背景は、新海作品らしく全く期待を裏切らない美しさでしたね。
序盤は予告編通りのテンポの良い進行で、田中将賀さんのキャラクターデザインは本当に馴染みやすくグッとメジャー感を感じます。
そして序盤も終わりにさしかかり、この後どう展開していくのか・・・?と思っていた30分過ぎ。まさかのミュージックビデオ的な場面の展開!新海作品の予告編が超大好物な自分としては、この楽曲とセリフが重なる演出が本当に大好きなんです。
予告編通りにこのシーンが見られるとは思わず感激した (C)2016「君の名は。」製作委員会 |
もうこの時点で『やってくれた・・・新海さん・・・やってくれた!』って感激で目頭が熱くなってきました。製作陣も分かってくれてるんだ、この良さを、新海さんの予告編の素晴らしさを分かってくれてるんだ!って本当に嬉しくなって、この作品はもう間違いない・・・傑作に違いない・・・と確信した瞬間でした。
※以下ネタバレとなりますのでご注意ください。
クライマックスからの盛り上げに嗚咽
そして後半。あの、現実が明らかになるシーン。糸守町の廃墟を前に劇場の空気が一変するような本当に鮮やかな場面の転換。ゾクゾクっとした感動で・・・ネタバレなしで見たので本当に圧倒されました。
そしてラストはどうまとめてくるのか・・・?新海監督ならどんなエンディングでもあり得るだけに本当に気が抜けない展開でしたね。『頼む・・・今回ばかりはキツいのはちょっと・・・』と祈るような思いでした(笑)
ラストをどうまとめてくるのか 直前まで予想がつかずに祈るように見た (C)2016「君の名は。」製作委員会 |
クライマックスを分散するように感動ポイントを仕込み、気持ちも分散するかと思いきや・・・実は階段を上るように着実に感情を揺さぶってきます。今考えるとホントうまいよねぇ。特にエンディングでの楽曲の使い方が最高!イントロのタイミングから綿密に計算されていて見事に涙腺を操ってきます。
だからラストの電車で目が合うシーンの前くらいから、もうすでに感極まってしまい(笑)相当やばい感じに。『これで再会できなかったらこの涙をどうしてくれよう!』と思っていたところで、一旦ちょっと引いて『えっ?』と思わせてからの一声!
今度は瀧くんが勇気を出す番だよと言わんばかりの演出!これもう本当にタメに溜めに溜めきった末での感動で・・・新海さんサービス良すぎ(笑)
あまりに涙が出すぎて何度も嗚咽を漏らしてしまったじゃないですかぁ!『はっはぅぅ・・・』っていいトシして恥ずかしいわい!(周りの人も泣いてたけどね)正直その前後のシーンは記憶が定かでは無くなっちゃて・・・再度見て確認するしかないね。
ホント、エンディングの前半は涙ですぎてほとんど目が開けられませんでしたよ。黒バックのシンプルなEDであそこまで泣かされるなんて・・・ラストシーンの余韻を思い返すだけで止まらなくなるんですよね。でも本当に気持ち良かった!
新海さんのサービスを堪能できた
全く期待を裏切らず全力で期待に応えてくれる、これが新海さんの作るメジャー作品なのか・・・と圧倒されました。そうしたら鑑賞後にみたインタビュー記事をよんで笑ってしまうと同時に納得してしまいました。
『観客に「楽しかった」と思ってもらえるような、サービスを尽くした作品をもう1~2本、長い映画を作らなければいけないと、今は思っています』
「君の名は。」が1分たりとも退屈させない秘密 - 東洋経済ONLINE より
ああ、これが新海さんのサービスなんだ・・・これまでの作品以上に、観客を楽しませるために全力でサービスしてくれたんだなぁ。だったら観客である自分は小賢しいこと考えずに全力で楽しむのが正しいんだよなぁって安心しました。
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どうして相手は瀧くんだったのか?
ストレートで理解しやすいとはいえ、考察したくなるところもたくさんある作品でしたね。(小説やパンフは未読なのでそちらには書いてあるのかもしれないけど、違ってたらゴメンなさい)
自分が一番に気になったのは、どうして三葉の入れ替わり相手が瀧くんだったのか?という事でした。
あれは一葉おばあちゃんが言っていた昔話の、大火のキッカケとなったまゆごろう(繭五郎?)という人・・・きっとあの時に火を出したという彼が瀧くんとなんらかの繋がりがある人なんじゃないかな?
前回は大火を出す事で村人を救ったものの出火の責任を取って村を出た。それで今回はテッシーにその役割を担わせて・・・なんてどうでしょう(笑)
だとしたら、三葉のお母さんやおばあちゃんの入れ替わり先は、瀧くんのお父さんやおじいちゃんだったのかな・・・その当時は入れ替わったとしても天災は起きないんだから意味のない不思議現象なんだけど。
意味は失われても組紐のように『入れ替わり』は継承されていった (C)2016「君の名は。」製作委員会 |
でも宮水家は次の天災に備えて、その入れ替わり現象を代々続けていたのかもしれませんね。一葉おばあちゃんが言ったように、その『意味は失われて』も組紐のように繋いでいったものなのかもしれないなぁ・・・その失われる前の記録も知りたいですね。
楽曲の『前前前世』じゃないけど、きっと世代を超えて共鳴し合っているんだろうなと。そういう物語大好きだなぁ・・・そういえば、町長になったお父さんも、もしかしたらこの天災に備えて導かれたのかもしれませんね。自分で選んでいるようでいて、結局運命だったりするんですよね。
子役の演技にびっくり!
今回、役者中心の声優でしたけど違和感はなくてすごくいい演技でしたね。役者さんの声優だと、どうしても素の印象が強くなったりしますが、声を聞いて顔が浮かんだのは市原悦子さんくらいで、長澤まさみさんもいい感じで溶け込んでいましたね。
市原悦子さんはキャラ自体を再現しているので顔が浮かんで当然 (C)2016「君の名は。」製作委員会 |
瀧くん役の神木隆之介くんは安心できるというか本当うまいですよね。この作品の雰囲気というか新海さんの作風に語り口があってる気がしたな。
ヒロインの三葉役の上白石萌音さんは18歳なんだってね。役者っぽさというか良い意味で声優的じゃない感じが良かったと思う。あと、三葉の同級生テッシーこと『勅使瓦克彦』は、モデル出身の成田凌くんが意外と言っては何だけど、すごくキャラにあった演技でよかったですね。
有名声優の悠木碧さんは、逆に目立たずすごく自然に役に溶け込んでいて、やっぱすごいやぁって感心してしまった。
妹の四葉は本物の子役が演技していたと聞いてびっくり (C)2016「君の名は。」製作委員会 |
もう一人注目だったのは、妹の『四葉』の役者さん。本物の子役(12歳)の谷花音さんがやってると知ってビックリ。すっごい力のある子役キャラで、ちょっと癖のある声なので絶対声優さんかと思ったよ!まじか!
一貫した新海作品のテーマ
今回の作品が発表されて、東映の拡大上映とかどんどんスケールの大きい話になってて『ヒエェ〜大丈夫なの?』って1ファンに過ぎない自分が心配になっちゃうくらいで・・・大勢の人に期待されるという重圧というか辛さって相当なものじゃないかなぁと思ってました。
凡庸な自分の頭では、ほかにどんなネタがあるのかまるで思いつかないし(笑)、予告編を見る限りは、男女入れ替わりもので・・・なんか一見ありふれた話のようで。マンネリ化とかしちゃってるのかな?って。
でも実際に見てみれば、マンネリとは逆に一貫して繰り返しテーマを追求したうえで、セカイ系と現実のラブストーリーという、これまでの作品の枠組み自体を融合させて、映像もストーリーも、最新の日本アニメとしてふさわしい作品に仕上がっていました。
セカイ系を超えた2016年にふさわしいポスト・セカイ系と言いたい作品 (C)2016「君の名は。」製作委員会 |
しかも『新海作品らしさ』はしっかり保ったままでこれを成し遂げたんだから本当にすごいですね。『人と人との心のつながり』という普遍的なテーマ。
自分が大学生だった頃、羨望の眼差しで見た初期作『ほしのこえ』から連綿とそのテーマを紡ぎ続ける新海作品。あの時・・・14年後にこんなすごい作品を見せられる事になるなんて想像もしてなかったけど、本当に素晴らしかったです!ありがとうと感謝したくなる作品でした。
<追記>新海監督への気持ちがすっごい共感できたブログです。ホント泣かせてくれるくれる感想でした。
『だが先生は飛んだ。ついにエンターテインメント長編をモノにした。小さな痛みを感じながらも、これは心から祝福したいと思うのです。』
ボーキャクとは忘れ去ることなり「君の名は。」 - 挑戦者ストロング より
2回目鑑賞後の追記
『言の葉の庭』のゆきちゃん先生が出てた!?
ようやく2度目を見る事ができました。夏休み明けでもすごいお客の入りで話題作ってのを実感しますね。今回は多少冷静に見られましたが、改めて楽曲を使うタイミングが上手いなぁ・・・と。セリフを被せてくる予告編的な演出は本当に好きで堪能しました。
2度目でまず気づいたのは三葉の古典の先生!声を聞いたときに「あれ?もしや!』と思ったけど、EDのクレジットで『ゆきちゃん先生:花澤香菜』って出てませんでした?『言の葉の庭』のセルフオマージュかと思いきや『本人出演』って事かよ!って。でもクレジット見た時すっごい暖かい気分になったんですよね。
あ、でも、もしかして災害後に東京に戻ってこちらも再会?なんて事になったりして・・・妄想が膨らみますねぇ(笑)
震災モチーフと日本人の思い
それにしても、図らずも今年の話題作である『シン・ゴジラ』と『君の名は。』はどちらも震災をモチーフにしているんですよね。上で紹介したpencroftさんのブログにあるように『こうあってほしい』という日本人の思いが作品に投影されているとも言えるのかもしれません。
特に『君の名は。』は東日本大震災のみならず、それに隠れてしまいがちな長野の栄村の震災や、地震以外の地方の災害なんかも連想してしまったんですよね。
評論家の東氏のツイート(映画鑑賞前)に直接結びつける訳じゃないけど、いろんな『記憶』の中身が少しづつ風化して形だけが残っていく、そんな現実のある2016年の今だからこそ見ておきたい作品だよなぁって感じました。ぼくはじつは震災後、アニメ的なもの、キャラクター的なものへの関心を急速に失ってしまいました。その理由がさやわか氏の評論でクリアになった気がします。アニメは傷を忘れさせる。だから遠ざかった。しかし現実でもひとは傷を必ず忘れる。そう考えれば、新たな批評的視座が導けるのかもしれません。— 東浩紀 (@hazuma) 2016年8月30日
さやわか氏の評論が掲載されたユリイカ9月号
ちなみに東氏も鑑賞後に「100点に近い』との評価をしていて正直驚きました。以外と厳しい評価するかなぁと思ってたので。その上での、次のツイートは結構考えさせられますね。
ひとつ繰り返しておきたいのは、あの作品は運命の相手と結ばれる作品では【なく】、なぜ人々が運命の相手がいると思い込んでしまうのか、その理由こそが語られた作品だということです。この読みの背景には「ゲーム的リアリズム」があるのですが・・でもこれもツイッターでは説明不可能ですね(笑)— 東浩紀 (@hazuma) 2016年9月4日
東さんのこの解釈は、隕石によって糸守の住人たちが死なず、主人公たちが互いの名を忘れたまま出会う世界を基準となる現実とみなすもので、要するにこの映画全体を遡行的に生み出される条件法過去(可能世界)のファンタジーとして読むという路線かな。https://t.co/QeR3OJgFyt— 仲山ひふみ HifumiNAKAYAMA (@sensualempire) 2016年9月4日
な、なるほど・・・!そういう見方もあるかも。評論家というか・・・頭のいい人の考える事は面白いなぁ。(詳しい感想を生放送でやってたらしいけど見たかったなぁ・・・)そうです。 https://t.co/8m2VnWtt2O— 東浩紀 (@hazuma) 2016年9月4日
ティアマト彗星軌道問題
SF作家の山本弘氏のツイートなどで話題になった彗星軌道問題。初見の時は気づかなかったのですが、劇中のニュース映像に間違った軌道図が表示されていたんですね。自分もTwitterのフォロワーさんに教えていただきました(感謝です)。
本編に影響ないとはいえ天文好きだとちょっと気になるミスではありますね。2度目の鑑賞で確認しましたが、『ニュース映像の軌道図』は3回ありました。冒頭1回に後半2回。後半の2回はたしか、地球最接近日のニュースだったような気がします。ティアマト彗星の軌道が根本的に間違ってるよ! ありえないよ!— 山本弘 (@hirorin0015) 2016年8月29日
冒頭の1回目の映像では、太陽の向こう側を回る正しい軌道図なのに、後半の2回(たしか当日の朝と夜?)は太陽の手前を回る誤った軌道図になっていましたね。確かにこれはちょっとありえない軌道・・・。
最初のニュース映像に出ていた正しい軌道図 (分かりやすくするため略図) |
後半2・3度目のニュースに映った間違った軌道図 (位置関係はうろ覚えです) |
まあ、ストーリー展開には影響ない『単純ミス』なのでBD版の発売時には修正されているだろうという事で落ち着いているようです。
実際、最初の軌道図では1200年という長周期彗星らしく角度の広い双曲線軌道っぽくなっていて『意外とちゃんと検証してあったのでは?』と思わせるところもあります。(参考:国立博物館 宇宙の質問箱)
何かの拍子に間違った伝達があってミスが見逃されちゃったのかもしれませんね。とはいえ、ミスと言うだけではつまらないので、とりあえずBDで修正されるまでの仮設定として『後半2回のニュースは同じ放送局で、番組スタッフの勘違い誤った軌道図を放送してしまった・・・』というのはどうでしょう?
『視聴者からの苦情で後日訂正した』というサイドストーリーにしておけば映画鑑賞中も気にならないで済むかも・・・(笑)少々無理がありますが。
いずれにせよ作品の評価には特に影響はないですね。BD版が楽しみになるくらいです(笑)
関 連 IMAX版を見に行った時の感想も書きました。良かったらご覧ください!
『君の名は。』IMAX版の感想:空気感を感じる映像に2Dアニメの潜在力を体験できた - アニメとスピーカーと‥
http://www.kiminona.com/index.html